NTT東日本「業務のムダ徹底根絶」成功の裏側 「全タスクの1/4は不要」気づいた契機は?

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リモートワークによって労働生産性を向上させた一方、コミュニケーションやチームビルディングの面で新たな課題が浮上した企業は少なくない。NTT東日本も新規事業の推進に当たり、この同様の問題に直面していた1社である。同社が取り組んだのは、Asanaを使った「働き方の再構築」だ。単なるSaaSツール導入にとどまらない、同社独自の取り組みを追った。

リモートワークが、新規事業開発の壁に

NTT東日本が今、非通信を含めた成長分野へのシフトを進めている。コールドチェーンDXやオフィスDXといった新規事業を推進しているが、その壁の1つになったのが、2020年4月から全社的に導入されたリモートワークだ。

同社で新規事業開発を手がけるビジネス開発本部は、全部で約600人の部署。さらに協業のパートナーも100〜120人ほどいる。従来はオフィスで直接顔を合わせて仕事を進めていたが、リモートワークの活用により、コミュニケーション不足が顕著になったという。ビジネス開発本部第四部門DXプロデュース担当 担当課長の秋田純氏は、こう振り返る。

「以前は、オフィスでメンバーの行動や表情を見れば、それぞれが抱えている仕事の状況をおおむね把握できました。しかし、リモートワークではそれが難しい。マネジャー目線では、メンバーに任せた仕事がきちんと進んでいるか、複数名のチームで担当している案件は誰が作業担当者になっているのか、一人ひとりがモチベーションを維持できているか、といったことがすべて見えにくくなりました」

NTT東日本 ビジネス開発本部 第四部門DXプロデュース担当 担当課長
秋田 純

メンバー同士でも、目標の理解や共有といった点で課題が浮き彫りになった。

「メンバーもマネジャーも、個人が頭の中でタスクを整理している状態。いわゆるガラパゴス化しており、組織として危険な状態にありました。結果、そもそも目標やゴールがどこにあるのか、自分が何を目指して働くべきか、メンバーが見失ってしまうケースが増えてきました」

これらの課題は、2020年7月の体制変更でさらに顕著になった。

「チームの再編や新メンバーの着任があり、コミュニケーションの活性化やチームビルディングがより重要に。会社としても問題意識が強まり、新しくツールを導入して、働く環境や仕事の進め方を見直すことになりました」

Asana導入は、働き方を再構築する最大のチャンス

ツール導入に当たって秋田氏がいちばんに意識したのは、「働き方の再構築」だ。秋田氏は、コロナ禍において自身がダイエットに取り組み成功した経験を踏まえ、こう明かす。

「ダイエットを通じて思い知ったのは、本質的な目標を忘れてはゴールにたどり着けないということ。ダイエットの本来の目標は、健康体でいることです。ただ体重を減らすのではなく、その過程で運動と食事の生活習慣を見直したからこそ、体質改善に成功しました。働き方も、理論的にはまったく同じ。SaaSで疑似オフィスをつくって昔と同じ環境を再現するのではなく、多様化・複雑化する働き方に適応できるように、仕事の進め方を再構築しようと考えました」

問題は、そのためにどのツールを選ぶか。社外とも連携する必要があるため、幅広い企業に使われていることを条件に据えて検討を進めた。グループ会社へのヒアリングを行ったところ、最初に候補に挙がったのがAsanaだった。

「ほかにも候補となったツールはありましたが、まずはグループ会社が活用していて信頼性の高いAsanaの使い勝手を試そうと考え、2020年10月に導入に至りました。これを、当社の働き方を再構築する最大のチャンスと捉え、Asanaの世界に飛び込むつもりで導入を進めていきました」

既存の業務や仕事の進め方に合わせてSaaSを選ぶのではなく、SaaSの仕組みに自社の仕事を合わせるという発想が必要

導入に当たり、2020年8月にビジネス開発本部と情報システム部門のデジタル革新本部でワーキンググループを発足させた。そのメンバーだった井上麻衣氏は、こう明かす。

「事業部は、できる限り自由に情報を扱いたい。一方、情報セキュリティ面では安全性を重視したい。どのように運用すれば自由度と安全性を両立できるのか、ルール策定には苦労しました。なお、テスト運用の意味も込めて、ワーキンググループとしての業務はAsana上で進めました。想像以上の便利さ、UIのよさを日々実感できました」

NTT東日本 ビジネス開発本部
井上 麻衣

同社はまず社員100名程度で、比較的機密性の低い情報に限定してAsanaの利用を開始した。「試験的にスモールスタートしたところ、複数の部署から導入希望の声が上がりました。とくに営業部門は、機密性の高い顧客情報もカバーできないと意味がありません。Asanaの利便性を、早く全社員に体感してもらうべく、ルール策定を急ピッチで進めました」と井上氏は振り返る。

SaaSツールの導入に際して懸念事項となるのが、効果測定だ。とくにコミュニケーションの課題解決を目標にしていると費用対効果を示しにくいが、「労働生産性を指標として、Asanaの費用対効果を明示。社内向けにも有効な説得材料となった」(秋田氏)という。

こうして同社のAsana導入プロジェクトは順調に進行。2021年7月には、すべての情報をAsana上で扱えるようになった。

Asanaによってあぶり出された、業務上のムダ

Asanaでは、期限を超過したタスクは赤く表示され、ぱっと見で進捗の遅れを把握できる。NTT東日本でも、Asanaによって各タスクの状況を可視化し、業務の進捗を一覧できるようになった。ただ、Asanaの真価は、秋田氏が当初目指した「働き方の再構築」にある。

Asanaの使用シーン。直感的にわかりやすい、操作性の高いUIがAsanaの強みだ

「そもそもタスクの中には、本質的な業務ではないもの、実は対応不要なものも多くあり、それらがAsanaによってあぶり出されました。今、そうした業務上のムダは捨て、スリム化しているところです。導入前と比べると、全タスクのうち4分の1ほどを削減できたと思います」(秋田氏)

「Asana導入後、一つひとつの仕事の目的がわかりやすくなりました。ゴールが言語化されることで、迷うこともなくなります。不要な社内会議が減った代わりに、自分の仕事をうまく『ワークマネジメント』できるようになったとも感じます」(井上氏)

NTT東日本は早くも次の展開を見据え、新規事業の1つ「オフィスDX」との融合を推進している。具体的には、雑談など偶発的な会話から良質なビジネスアイデアが生まれることに目をつけ、そうしたコミュニケーションを活性化するオフィスDXサービス「Keeple」を生み出した。秋田氏は今後の展望をこう明かす。

「オンラインでの計画的なタスク管理はAsana、リアルな偶発的な出会いはKeepleと使い分ける想定です。2つを組み合わせることで新しいコミュニケーションが生まれ、ビジネスの種が見つかることを期待しています」

自社が実験台になり、ハイブリッドなコミュニケーションの可能性を探っているNTT東日本。仕事のムダ根絶に向けて、視界は極めて良好だ。

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