ホーユー「成熟市場でヒット商品を生む」挑戦の道 ヘアカラーの老舗がDXで生む「余白」の本質

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ホーユー コンシューマーマーケティング本部 商品企画室 商品企画2課 課長代理 伊藤 聡氏
「DXによって生み出したリソースで、高い付加価値を生み出す」。多くの企業がDXで目指すゴールの1つだが、そう簡単ではない。そんな中、創立100年の老舗にしてこのゴールへ邁進している企業がある。ヘアカラー商品で知られる化粧品メーカー・ホーユーだ。同社は成熟市場で飛躍の緒をつかむべく、高付加価値商品の開発を進めている。その実現のために必要なものとはいったい何なのか、同社を取材した。

成熟市場でヒット商品を生むには“余白”が必要

「この先、ヒット商品を継続的に生み出すには、業務に“余白”をつくることが不可欠。しかし現状の働き方では、それを確保するのは難しい――」

そんな課題に向き合ったのが、ホーユーだ。同社は2023年に創業118周年・創立100周年を迎える老舗で、国内市販品において高いシェアを誇る。代表商品に白髪用カラーリングの「Bigen(ビゲン)」や「CIELO(シエロ)」、黒髪用カラーリング、カラーケアの「Beautylabo(ビューティラボ)」などがあり、アジアを中心に海外へも商品を広く展開する。頭髪の美しさを通し、人々の心に彩りを与えてきた企業だ。

そんな同社だが、一方で課題も抱えていた。同社で商品企画などに携わる伊藤聡氏は、こう語る。

ホーユー コンシューマーマーケティング本部 商品企画室 商品企画2課 課長代理 伊藤 聡氏
ホーユー コンシューマービジネスカンパニー コンシューマーマーケティング本部 商品企画室 商品企画2課 課長代理
伊藤 聡

「当社の商品開発は通常、企画から製剤研究、包材研究へ振り出し、川上から川下の各部門へ“順にボールを渡していく”形で進みます。ただ、これでは商品完成までに長い時間がかかります。さらに、企画時に立てたコンセプトがだんだん無難なものになっていき、結果的に特徴が見えにくい商品に落ち着いてしまいがちです。そもそもヘアカラー業界は成熟市場。人口減少や嗜好の細分化を受け、今後はいっそう競争が激化するでしょう。こうした現状から、仕事の進め方を変える必要性を感じていました」

そんな課題感から立ち上げられたのが、各部門を横断して商品開発を進めるプロジェクトだ。

「コンセプト検討の段階から開発者やデザイナーなどを含めたチームを組み、エッジの効いた商品を生み出そうと考えました。当時、社内にはメールやチャット、社内システムなどツールが入り乱れ、部門によって使い方もまちまちでした。そのため確認やまとめに手間がかかり、タスク漏れや遅れが発生しやすくなっていました。チーム横断の効果的なプロジェクトを実現するには、部門をまたぐ大量のタスクをまとめ上げる必要があり、注目したのが、ワークマネジメントツールのAsanaでした」

伊藤氏はAsanaの導入に当たり、もう1つの効果にも大きな期待を寄せていた。それが、冒頭で触れた“余白”である。

「新しいニーズを見つけるには、ユーザーの細かい変化やトレンドをつかむ必要があります。そのためには、オフィスでデスクの前にいるのではなく、例えば街を歩いて『このヘアスタイルがはやっている』と発見したり、お客様の声を聞いたりといった活動こそ重要です。しかしこれは、日常にある程度の“余白”がないとできません。Asanaを導入して業務を効率化することで、この余白を生み出せるのではないかと考えました」

もともと同社では、海外展開を手がける部署でAsanaを導入していた。伊藤氏はその部署からAsanaの存在を聞いていたという。

「Asanaを選んだ決め手は、すべてのタスクを一元管理できること。加えて、高いカスタマイズ性を備えつつも機能が多すぎないため、ITリテラシーのレベルにかかわらず全員が直感的に使えると感じました。総合的に見てこのプロジェクトに適したツールだと判断し、テスト導入に至りました」

プロジェクト進行の遅れが、ほぼなくなった

こうして伊藤氏は、2022年6月からプロジェクトチームでAsanaの利用を開始。10月には対象を自部署に拡充し、厳しいセキュリティー基準に対応する“Asana Enterprise”の導入を決めた。22年からのAsana導入により、ホーユーではどのような変化が起きたのか。

「企画・開発からプロモーション、予算管理など多岐にわたるタスクのすべてが整理され、確認にかかる時間が明確に減りました。Asanaは、自部署の業務にぴったりフィットしていると感じています」

マイタスク画面
実際にホーユー社内で利用されているAsanaの「マイタスク」画面。自分に関係するタスクが、分野や期限とともに一覧できる
各商品の素材管理ページ
ホーユーでは、各商品の素材もAsana上でわかりやすく管理している

「Asanaでは、プロジェクトやタスクの全体像を一覧でき、期日や担当者も空欄を埋める形で決められます。すべての会話をAsana上に一元化することで、大幅に効率化されました。社員同士での業務依頼もスムーズになり、進行の遅れがほぼなくなりました。

また、手書きで作成するような簡易なToDoリストでは、それ以後の業務の流れが読みにくくなりがちです。一方Asanaでは、目の前のタスクに集中しながらも、先に発生するタスクまで見渡すことができます。『時間が空いたから、来週のこのタスクを先にやっておこう』といった臨機応変な差配も、直感的に行えるようになりました」

Asana上でよみがえった「おせっかい文化」

効果はそれだけにとどまらない。もともと伊藤氏の部署では、タスクの洗い出しと割り振りのための会議を毎月2時間ほど開き、さらに進捗を口頭で随時確認していた。それらの作業が実質的にAsana上で行えるようになったため、会議や口頭確認の大部分をカットできた。加えて、スケジューリングも自律的に行えるようになっている。

「以前は社内の承認フローを踏まえた進行管理が難しく、上司の承認を受けてから次ステップの予定を組むといった場当たり的な進行になりがちでした。当然、いざ承認を得たいときに上長の予定が空いていなければ、その分プロジェクトが遅延してしまっていました。けれどもAsanaは『このタイミングでこの上長の承認が必要』という流れが一目で把握できます。前もって準備を進められ、仕事の全体がスムーズになりました」

現在は、Asana導入当初の目的であった「部門を横断しての企画・開発プロジェクト」も順調に進んでいるという。

Asana上の「掲示板」画面
Asana上の「掲示板」画面。1つのプロジェクトの中で、共有事項や質問BOXなどの機能が並んでいる

加えて、こんな意外な効果も見られている。「他部署で、Asana上でやり取りを重ねるうちにふと話題が横にそれたことから派生して、新しいビジネスアイデアが生まれた例がありました。当社にはもともとほかの人の職域に積極的に立ち入って関わり合う、いい意味での“おせっかい”文化がありましたが、最近はリモートワークが進んだこともあってその文化が薄れつつあるように見えていました。Asanaというデジタルツールによって、アナログ文化のよさが再現されている。この点を、非常に面白く感じています」。

デジタルツールの活用で業務を効率化し、そこで生まれた余白を、新たな商品を生み出すことに注ぎ込む。同社の取り組みには、まさにDXの本質があった。100年企業のホーユーが、成熟市場の次なる100年でどんなユニークな色を世に送り出していくのか注目したい。

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