大統領の就任初年度にはあらゆる政策課題が「最優先」のように打ち出されるものだ。そして真の優先課題は、時間の経過とともにおのずと明らかになってくる。
就任から7カ月、バイデン大統領はある政策課題に対し、明らかに高い優先順位を与えているように見える。サイバー防衛能力の大幅な増強だ。バイデン流の「同盟重視」に野心的な官民協力を組み合わせることで、広範かつ大胆な戦略を推し進めようとしている。費用がかかり、成功も難しい戦略だが、そうした中でも日本の政府と企業は重要なパートナー役を務めることになりそうだ。
今年5月に米東部のガソリン供給の半分を担う石油パイプラインがランサムウェア(身代金要求型ウイルス)攻撃で停止するという大事件が発生する以前から、バイデン政権はサイバーセキュリティー強化に向けた長大な大統領令を準備していた。そこで列挙された課題は多岐にわたる。
サイバー攻撃に関する情報共有の壁を取り除く、重大事案の調査と対策の検討を進める「サイバー安全審査委員会」を設置する、ハッカー侵入後も内部データを保護できるよう暗号化対策などを厳しくしたゼロトラスト・アーキテクチャーの利用を政府内で広げる、といった対応を明確な期限付きで求めた。安全審査委員会は、航空事故などを扱う米国家運輸安全委員会(NTSB)がモデルになっている。
厳しい民間への要求
サイバー攻撃対策を打ち出した大統領はバイデン氏が初めてではない。が、脅威は猛烈に拡大し、かつてない対策が求められるようになっている。2020年に世界で報告されたランサムウェア攻撃は前年の5.85倍に急増。サイバー犯罪が世界に与える損失は今年、6兆ドルに達すると予測される。対策が急がれるゆえんだ。
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