日本製鉄がこの3月に中長期経営計画を発表した。目玉は鹿島にある高炉の停止を含む国内製鉄事業の生産能力削減だ。これらによって約1万人の合理化を見込むが、配置転換等で吸収し希望退職募集は行わないそうだ。「雇用を守る」と経営陣は胸を張る。
1万人規模の人員減が希望退職の募集もなしに可能なのか、と一瞬疑問を持った。が、日鉄の前身である新日本製鉄が約30年前の鉄冷えの時代に行ったリストラを思い出し合点がいった。当時、「配置転換」の命を受けた従業員が退職を余儀なくされた、グループ会社や取引先が人材受け入れを求められたといった話を聞いた。
製鉄所は単に雇用者数が多いだけではない。祖父の代から業務に携わる者もいるほど地域社会と一体化している。地域に根付いているが故に、今回も転勤できずに自己都合退職を選択せざるをえない従業員がそうとうにいるだろう。
日鉄には「社命に応じて異動しない者は『従業員』ではない」という昭和の価値観がまだあるのかもしれない。だが、従業員のことを考えた経営を標榜するのであれば、割増退職金が払われる希望退職という選択肢も示すべきではないだろうか。
敵対的TOBの副次効果
日鉄と取引がある企業を経営する知り合いは今回のニュースに戦々恐々としていた。過去に「親会社様」(資本上では親会社ではないのだが)から、賃金水準の高い社員を押し付けられた経験があるからだ。結果、新卒採用の抑制とプロパー社員の昇給抑制という形のシワ寄せが及んだ。次に人材受け入れの要請があった場合、自社の経営や従業員を考えて断れるか今から心配している。
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