推薦者|早稲田大学人間科学学術院 教授 橋本健二

格差社会という言葉が使われるようになったのは2006年ごろから。最初は「本当に格差は拡大しているのか」というところが論点だった。現在は、格差拡大は事実として否定できない、というところまできた。専門家の間で「格差拡大はよくない」という合意はできているのだが、社会的な一致は完全には得られていない。政策を動員してまで格差を縮小するべきなのかどうか。その社会的な合意はこれからだ。
社会的合意までのポイントは3つ。1つ目は格差拡大を放置しておけば貧困層は増えること。貧困層増加がよくないとの合意はあるので、この事実ははっきりさせておきたい。2つ目は社会全体に悪影響を及ぼすこと。犯罪や人々の健康状態の悪化、そして社会的な連帯の損壊による不毛な対立が起こる。3つ目は経済的効率が損なわれること。経済成長が阻害されたり、貧困層を中心に子供たちの能力開発ができなくなったりする。こうした論点を深めていく必要がある。参考になる本を紹介したい。
貧困層は形を変えて存在
貧困研究の第一人者による『貧困の戦後史』。地道な実態調査を積み重ねてこられた人で、この本は戦後日本の貧困のあり方、そのあり方の変化を追いかけたものである。敗戦直後の戦災者、経済復興の途上の日雇い労働者、現代のネットカフェ難民……。貧困層はいつの時代にも形を変えて存在してきたと。その流れを丹念に描く。
貧困は基本的には自分で対処すべき問題だ、つまり自助であると著者は強調する。ただし、個人的な問題であるがために、政治は正面から取り組まなかった。政治のあり方が貧困問題を解決できなくさせたという。
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