IMF(国際通貨基金)は先日、米バイデン政権の大規模財政支出の影響を主な理由として、今年の米国の成長率予想を5.1%から6.4%へ大幅に引き上げた。同時に対GDP(国内総生産)比の需給ギャップの想定もマイナス(需要不足)から一気に0.6%のプラス(需要超過)へと見直した。
米国の10年物の物価連動債の価格から算出される期待インフレ率(BEI)は、この3月に約2.4%まで上昇した。2月にサマーズ元財務長官は過剰な財政刺激がインフレを招くと警鐘を鳴らしたが、市場はそうしたシナリオを本格的に織り込みつつあるのだろうか。
現時点で、その答えはまだノーである。確かに10年物のBEIは、トランプ減税で好況に沸いていた2018年の水準をすでに0.2ポイント上回っている。
しかし、リーマン危機を挟む10年間ほどは、同数値が2.5%を超えることも多かった。また、フォワードのBEI(5年後から5年間のBEI)は、まだ2.2%にとどまり、ようやくコロナ危機前の水準に戻った程度である。そもそもフォワードがスポット(現在のBEI)より低いこと自体が珍しく、市場は短期的なインフレ率上昇をある程度見込みつつも、長期的なインフレの加速は本格的に織り込んでいない。市場の評価は、パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長やイエレン財務長官のインフレについての見方にもおおむね沿ったものだ。
実際、経済全体での0.6%の需要超過が、それほど大幅なインフレ加速を引き起こすとはいえない。米国経済は、トランプ減税で押し上げられていた18年から19年にかけて0〜1%程度の需要超過状態にあったが、この間の米国コアPCEデフレーター上昇率(個人消費に関するインフレ率)は1.6〜2.1%にとどまっていた。
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