有料会員登録 東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #経済を見る眼

迫られる雇用調整助成金の改革 確かに企業のニーズが強いのは疑いないが

3分で読める 有料会員限定
  • 太田 聰一 慶応義塾大学経済学部教授
慶応義塾大学経済学部教授 太田聰一(おおた・そういち)1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

雇用調整助成金(以下、雇調金)が再び注目を集めている。雇調金は、企業が雇用維持のために労働者を休業させた場合に、政府が休業手当に対して助成を行うものだが、新型コロナウイルスによる経済ショックに対応するため空前の特例措置が4月から設けられたことは記憶に新しい。

とりわけ、条件を満たす中小企業に対する全額補填と、上限日額を従来の8000円強から一気に1万5000円に引き上げる施策などが話題を呼んだ。この特例措置は当初の9月末までの予定が12月末までに延長されたが、現在、さらに年度末まであるいは4月以降への延長が議論されている(本稿執筆段階では未決定)。

経団連は再延長を求める要望書を11月4日付で提出した。延長を要望する理由として、雇調金が失業予防策として有効に機能していること、その一方で、感染症終息の道筋はいまだついておらず、依然として雇調金への企業のニーズが強いことを挙げている。

同時に、財政面の課題や、元の状況への段階的復帰も見据える必要があることに言及するなど、改革の必要性もにじませている。実際、雇調金の支給実績は、10月末時点で累計2兆円を超えており、リーマンショック後4年間の支給実績を大きく上回っている。

確かに企業のニーズが強いのは疑いない。特例措置によって企業は休業手当の大部分をカバーされるので、賃金コストに悩まされることなく、これまでの人員を確保しながら実際の雇用水準を減らすことが可能となる。退職金などの人員整理のコストを回避できるだけでなく、将来的に雇用水準を引き上げる必要が生じたときには休業者を呼び戻すことで、新規採用に伴う時間的、金銭的ロスも避けられる。逆にいえば、よほど苦しい経営状況に至らない限り、企業に人員を整理するインセンティブは生じない。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数