経済全体の姿は、支出(需要)、生産(供給)、所得(分配)の3つの側面から観測される。このうち、四半期速報GDP(国内総生産)=QEとして公表されるのは、呼び方はGDPだが、その実体は消費、設備投資、公共投資、輸出などの支出面の姿である。生産、所得面については、毎年末に公表される年度確報を待たなければならない。
欧米では、QEに合わせて生産、所得面の姿も公表されている。最新時点での家計の可処分所得、貯蓄率などが、国民経済計算と整合的な形でわからないのは、日本の欠陥だと指摘されてきた。
そこで内閣府経済社会総合研究所は2019年8月から、四半期ベースの家計可処分所得・家計貯蓄率の速報値(以下、新推計値)の公表を開始した。私は、1997〜98年に同研究所の前身である経済企画庁経済研究所の所長を務め、こうした推計値の必要性を十分承知していたが、予算・人員面などで力が及ばなかった。新推計値公表を強く支持する一方、推計に当たる職員の労働強化にならなければよいがと考えてしまう。
この新推計値の公表は日が浅く、QEから1カ月遅れであることなどから、まだあまり注目されていないようだ。しかし、今年9月に公表された4〜6月期の新推計値は衝撃的なものだった。コロナショックが日本経済に最も大きな打撃を与えたときに、家計の所得・貯蓄面で何が起きていたのかを明らかにするものだったからだ。
これによると、まず、勤労者の賃金(雇用者報酬)は11.6兆円の減少となった(季節調整値の前期差年率表示なので、実際の金額はその4分の1、以下同じ)。こうして賃金はかなり減ったのだが、一律10万円の給付によって、通常はマイナス(支払い超過)の「その他の経常移転」が37.2兆円ものプラスとなった。結果、家計の可処分所得は30.8兆円も増えた。
この記事は有料会員限定です
残り 635文字
