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コロナ禍が後押しする国内生産回帰 見直しを迫られる製造業のグローバル戦略

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大阪大学大学院 経済学研究科教授 延岡健太郎(のべおか・けんたろう)1959年生まれ、広島県出身。81年に大阪大学工学部精密工業科卒業後、マツダ入社。米マサチューセッツ工科大学にて93年Ph.D.(経営学)取得。神戸大学経済経営研究所教授、一橋大学イノベーション研究センター教授などを経て2018年10月から現職。著書に『価値づくり経営の論理』など。

製造業のグローバル戦略が、コロナ禍によって見直しを迫られている。製造、流通、販売が世界規模で危機に直面する不可抗力のリスクを想定せざるをえなくなったからだ。不確実要因を減少させるために海外生産を国内回帰させる企業は増えるだろう。

実はコロナ禍とは関係なく、数年前から国内へ工場を戻すトレンドは始まっていた。資生堂やユニ・チャームなどが先陣を切った。今後、これが加速するのは間違いない。さらには、国内回帰の戦略や考え方を変える必要が生じている。

これまでは、国内と中国などの新興国との間で、製造コストの差が縮まったことが国内製造を誘引していた。とくに新興国の人件費が上昇したのが大きい。加えて、工場のスマート化が進み、製造場所によるコスト差が縮小した。今後は不確実性を前提とした国内回帰なので、その時々の製造コスト、為替レートや工場拠点の市場規模などの経済的な合理性では決められない。これを機に本質的な製造戦略を練る必要がある。

最大の課題は、国内で製造する商品の価値をいかに高めるか──メイド・イン・ジャパンだからこそ、高くてもユーザーが購入する商品である。残念ながらこれまで、日本のものづくり能力を高い価値にうまく結び付けられなかった。コスト競争に巻き込まれる商品が多いので、製造コストの低い海外生産しか選択肢が残らなかった。

新しい経営環境に合わせて国内生産を増やそうとしている今こそ、日本のものづくりでしかできない価値創出にもう一度真剣に取り組む必要がある。質の高い現場力や熟練工、優れた中小の部品メーカー、最新生産技術の導入・運用、安定した電力・水質や社会インフラなど、日本の優位性はまだ残っている。しかしこれまでは、その優位性よりも、海外の低コストのメリットが勝っていた。品質が少しよくても、商品の価値向上には結び付かない、と諦めた企業が多い。

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