新型コロナウイルス感染が世界中に広がった3月以降、半年にわたってほぼノンストップで上昇を続けてきた金相場に変調の兆しが見える。
8月7日に1オンス当たり2089ドルという取引時間内での史上最高値をつけたが、そこをピークに利益確定売りに押されて下落、11日には1911ドル、12日には1864ドルまで急落、4営業日での高値と安値の値幅が225ドル(約11%)まで拡大した。半年に及ぶ一本調子の上げ相場でたまった売りのマグマが一気に噴き出した形だ。
それに伴ってニューヨーク先物市場での出来高も急増、相場が急落した11日には155万枚(1枚=100オンス、重量換算で約4800トン)を記録。金の世界年間生産量を先物市場の1日で売買したことになる。金融でも商品でも出来高を伴って価格が変動するのは過熱感が出ている兆候であり、売買に注意を要する。先物のみならず相場上昇の牽引役であった金ETF(上場投資信託)の保有残高も減少しており、先物主導の投機的動きとは言い切れない。
3月以降の金相場上昇には、いくつかの要因が挙げられる。
コロナ危機が拡大する中、米国が大規模な金融緩和・経済救済策を打ち出したことで、米ドルの名目金利がインフレ率を下回って実質金利がマイナスになったことと、米政府債務の急膨張によって基軸通貨への信認が揺らぎ、米ドルの価値が大幅に下落したことがある。米金利と米ドルの要因に加え、コロナ収束まで長引くとの観測から実体経済の長期悪化が懸念されて、安全資産としての金が買われたとも考えられる。
8月の大幅調整は、米国債が売られ10年債利回りが跳ね上がったうえ、同日に発表された7月の米雇用統計が事前予想よりよかったことが引き金となった。ただそれはあくまでもきっかけにすぎず、夏以降の急速な上昇ピッチに過熱感があったことも事実だ。上昇トレンドに乗って短期的な取引益を狙う投機筋のポジションが整理されてむしろ健全な調整だったといえよう。
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