黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に暴行され死亡した事件を受けた抗議デモは一時、全米の2000カ所以上にまで広がった。その一方で、抗議は単に警察の横暴に対してだけでなく、背景にある「制度的人種差別」に向かった。また、それを生み出した米国や欧州の「近代」の歴史全体に及び出した。
制度的人種差別とは、フロイドさん事件のような個別の事象ではなく、貧困・住環境・犯罪などが絡み合い、黒人の平均余命までも短くならざるをえないような構造全体を指す。構造の原因をたどれば、奴隷制度に行き着く。
その結果、奴隷所有者であった初代大統領ワシントンや、米国独立宣言の起草者でもある第3代大統領ジェファソンの銅像が引き倒され、奴隷解放を行った大統領リンカーンの銅像までもペンキを塗られる被害を受けたりしている。銅像引き倒しなどは欧州各国にも及び、かつての植民地制度も批判されている。
名門・米プリンストン大学では、同大学学長を務め第1次世界大戦後に国際連盟創設を主導した大統領ウィルソンの名前を、学部や建物の名前から外すことを決めた。南部出身のウィルソンが人種隔離政策を支持していたのが理由だ。
これまでも米国では、南北戦争で奴隷制度維持を図った南軍側の旗や将軍らの銅像をめぐって、論争や事件が繰り返し起きてきたが、今回は歴史的・地理的広がりが南北戦争をはるかに越えている。
昨年がちょうど400年
背景に「1619年論争」がのぞく。この年、アフリカ黒人奴隷が初めて米国(当時は英植民地)に連れてこられたとされる。昨年がちょうど400年に当たり、ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙が8月に大々的な特集を組んだ。今も制度的差別問題を抱え込む米国の歴史の起点を1619年に置いて、米国史の見直しを試みた企画だ。フロイドさん事件の起きたこの5月に2020年度ピュリツァー賞(論説部門)を受賞した。
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