[Profile] たかはし・ゆき/1974年生まれ、福岡県出身。2005年、女性4人の裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成、刑事事件を中心に裁判傍聴記を発表。現在はフリーライターとして多方面で活躍中。著書に『暴走老人・犯罪劇場』『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』など。
山口連続殺人事件は、2013年に山口県周南市の小さな集落で起きた凄惨な事件である。住民わずか8世帯12人、半数以上が65歳以上という限界集落で、ある日突然5人の連続殺人と放火が起きた。
事件からほどなく犯人として名が挙がり、現場付近の林道で捕まった保見光成もまた、集落の住民の1人であった。
後にこの事件が大きな話題になっていった背景には、この村をめぐりさまざまな噂話がネットやマスコミで飛び交ったことがある。犯人の家に貼られていた「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という言葉が犯行予告だったのではないかというもの。犯人は村の人たちから村八分にあっていたのではないかというもの。
根も葉もない噂を立てられ、それを真に受けた無関係な人たちから一方的に攻撃される。どんどん騒ぎが大きくなっていき、さらに深刻な事態を引き起こす。本書で描かれているのは、今では当たり前のように頻発する、ネット炎上の原風景とでもいうべきものだ。
著者の取材も、ある噂話の真相を確かめようと試みたことから始まる。それは、この集落には“夜這い”の風習があり、その遺恨をめぐり殺人事件が起きたのではないかというものであった。
本書は、裁判傍聴マニアでもあった著者が2年以上の月日をかけて何度も現地に赴き、事件の全貌を描き出そうと試みた一冊である。
村人たちとの間に関係ができてくるにつれ、著者のもとにはさまざまな情報が集まり出す。保見の父親が泥棒であったという情報。かつて保見が村人から刺されたという傷害事件の話。コープの寄り合いが、集落の噂が集まる諜報機関のような役割を果たしていたという実態。
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