自分を任命した米大統領に「敵」と呼ばれたFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は今、どんな心境だろうか。
8月22〜24日、世界の市場関係者が注目する年次経済シンポジウムが米ワイオミング州ジャクソンホールで開催された。23日に講演したパウエル氏は、米国経済の堅調さを強調しつつ、ドイツ・中国など世界景気の減速やブレグジットなどのリスク要因を指摘。とくに「通商政策をめぐる不確実性」を新たな難題とし、「政策対応の手本となる先例がない」「金融政策は国際貿易のルールブックにはならない」と苦慮をにじませた。
当面の金融政策について同議長は、過去最長の11年目に突入した米景気の拡大を支えるため「適切に行動する」と述べ、約10年半ぶりとなった7月末の利下げに続く緩和を示唆した。当日のダウ平均株価は、中国による対米報復関税の報を受け安く推移していたが、同議長の発言でプラスに転じた。
その直後だった。トランプ大統領がツイッターで「いつもどおり、FRBは何もしなかった」と非難。「私の唯一の疑問は、われわれにとってパウエル氏と習近平国家主席のどちらがより大きな敵なのかだ」とまで書いた。そのうえで中国への制裁措置追加の方針を表明。加えて米国企業に対し、中国での生産の代替地を早急に探すよう要求した。結局、この日のダウは623ドルの急落。米景気に配慮したパウエル氏の慎重な発言も「トランプ砲」で木っ端みじんとなった。
不気味な人民元安
では、「敵」と呼ばれた2人は今後どんな対応に出るのか。米金融政策については、市場はすでに9月17~18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)における0.25%の利下げを完全に織り込み済み。一部には0.5%説もある。
焦点は、利下げの意味合いだ。パウエル氏は7月末の利下げ時には「(利上げ)サイクル半ばでの調整」と述べ、長期の利下げ局面入りは否定した。米中貿易戦争に伴う企業投資の鈍化など先行き不安が高まる中、景気悪化を未然に防ぐ「予防的利下げ」との位置づけだ。だが、今回のジャクソンホール講演では、そうした言及はなかった。米中対立も一段と先鋭化しており、継続的な大幅利下げの可能性は高まったといえる。
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