ロンドンの中心部を横断して北海へと流れ込むテムズ川の周辺には名だたる観光名所が立ち並び、街を象徴する人気スポットとなっている。このテムズ川にまつわる有名な作品が、ジョージ・ヘンデル(1685〜1759)の組曲『水上の音楽』。時の英国王ジョージ1世の船遊びのために作られたこの作品には、こんな逸話がある。
ドイツ・ハノーファー選帝侯の下で宮廷楽長だったヘンデルは、休暇を取って出かけた英国で大成功を収め、一度は帰国したものの1712年に再び渡英、帰国命令にも従わず定住してしまった。
ところがヘンデルを重用していたアン英国女王が急逝し、次の国王として戴冠しジョージ1世となったのが、なんとハノーファー選帝侯ゲオルク・ルートヴィヒだったのだから運命とは恐ろしい。ヘンデルの地位は一変、不遇のどん底に突き落とされた。見かねた周囲が国王の船遊びの音楽をヘンデルに作らせた結果、見事国王の寵愛を取り戻した、というのだ。
しかし最近では、英国王になることを見据えていた選帝侯ゲオルクが、英国王室の内部事情を探らせるために事前にヘンデルを派遣していた、という説もある。何が真実か定かではないが、『007』のお国柄だけに、ヘンデル・スパイ説を想像してみるのも楽しい。
肝心のテムズ川での船遊びは1715年に行われ、船に乗った50人ほどの楽師による『水上の音楽』を気に入った国王ジョージ1世は、往復の間に3回も演奏を楽しんだという記録が残されている。
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