欧州中央銀行(ECB)の次期総裁に国際通貨基金(IMF)専務理事のラガルド氏を充てる人事が物議を醸している。だが、この人選は正しい。
なるほど、欧州連合(EU)の幹部人事をめぐる政治的な駆け引きは美しいものではない。ラガルド氏の選出過程は不透明で、次期欧州委員会委員長人事と組み合わされ、密室で行われた様相が色濃い。
しかし、並外れた資質は否定しようがない。弁護士、フランスの財務相、そしてIMF専務理事として見事に仕事をこなしてきたラガルド氏には、粘り強さだけでなく、政治的な手腕もある。国際経験も豊かで世界的な知名度も高い。
欧州債務危機の中で見せた対応を批判する声があるのは確かだ。ギリシャの財政危機に対し、当時仏財務相だったラガルド氏は主流派の誤った考えを受け入れ、緊縮財政を推した。だが、2011年9月に筆者がラガルド氏と会ったとき、同氏は当時のトリシェECB総裁とは違って、内々にはECBによる大規模な介入と債務カットの両方を支持していた。
まれに見る率直さ
その後、ラガルド氏はIMF専務理事として、ギリシャに緊縮策を強いたのは誤りだったと素直に認めてもいる。このような自省の言葉はIMFでも異例だが、EUの官僚組織には決定的に欠けている。その意味で、自らの誤りを認め失敗に学ぼうとするラガルド氏の姿勢は貴重であり、好ましい。
政界経験を指さして、ECBと政治の距離が近くなると警戒する声もある。だが、加盟国首脳とのパイプは実際には大きな強みだ。現総裁のドラギ氏が欧州債務危機に際し「(通貨ユーロを守るためなら)何でもやる」と発言し、市場のパニックを鎮めたのは有名だ。ドラギ氏がこのような行動に打って出られたのも、事前にドイツのメルケル首相から同意を取り付けていたからにほかならない。
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