英中央銀行のイングランド銀行(BOE)で金融機関の監督に携わっている人々には「毎週、シェークスピア全集ばりの膨大な資料が届くようになっている」。BOEが先日発表した報告書「金融の未来」で、調査を指揮したヴァン・スティーニス氏はそう書いた。監督業務が高度に複雑化し、情報量が爆発的に増えていることを示すエピソードだ。
ヴァン・スティーニス氏は、テクノロジーを味方につけるべきだと力を込める。金融情報を精査し、リスクを特定するのに、人工知能(AI)などをもっと活用するということだ。同氏はまた、金融監督業務が複雑化しているのは、監督機関が多数存在し、主導権争いが起きていることにそもそもの原因がある、とも指摘している。
中でも問題が切迫してきているのが決済システムの分野だ。フェイスブックのデジタル通貨「リブラ」など新しい決済手段が次々と登場する中、決済システムの監視は格段に難しくなってきた。その結果、各監督機関がバラバラに介入する事態となっているのである。
ヴァン・スティーニス氏は、航空管制のような仕組みを導入しやり取りを整理するよう求めている。この提案には英政府も乗り気だ。ただ、複数ある監督機関の所管はそれぞれ違い、各組織を動かす政治家も異なる。航空と違って金融では“管制官”を決めること自体が大問題なのだ。はたして、政府は答えを見つけられるだろうか。
決済手段の変化に関する記述も目を引く。各国で進むキャッシュレス化の動きだ。ドイツの現金主義は今でもさして変わらないが、スウェーデンでは現金使用がこの10年で8割以上減り、英国でも年率10%のペースで減少が続く。「手をこまぬいていると、変化に取り残され決済手段を失う人々が生まれかねない」と、ヴァン・スティーニス氏は警告する。
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