どんな仕事でも、理想と現実には距離があるものだ。
しかし、顧客関係管理・CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)ほど、その差が大きいものはないだろう。
CRMによって既存の顧客の離反を食い止めるほうが、新規顧客を獲得するよりコストは安くなる。それが理想だ。しかし、それがデータで実証されることはほとんどない、という現実がある。
それは無理もない。新規顧客の獲得コストに対して、既存の顧客の離反を食い止めるコストは算出が難しいのだ。
CRMシステムの導入費と運用費、そして実際に稼働させるためのセールススタッフの人件費、教育費、システムの使い方のトレーニングに要する費用、ここまではまだ算出できる。
しかし、それを業務に定着させるための継続的なコミュニケーションが曲者(くせもの)なのである。
例えば、顧客の誕生日を覚えておき、誕生日プレゼントを贈る、という営業の必勝法があったとする。手帳にメモをしたり、ある人はエクセルで管理したりする顧客の誕生日を、導入したCRMシステムに入力させようとする。しかし、それだけのことでも、なかなか定着しない。それまで繰り返してきた習慣を変えるのは、並大抵のことではないからだ。
さらにはこのようなケースもある。トップ営業マンは顧客の誕生日に加え、ペットの名前も覚えているとする。これは秘伝のたれのようなもので、ほかの営業マンには教えたくない。すると、その営業マンは、そのペットの名前だけは引き続き自分の手帳で管理することになる。結果、そのトップ営業マンは、顧客情報をCRMシステムと自分の手帳で二重管理するようになる。
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