2018年に翻訳版が日本で出版され、マーケティング担当者の間で大きな話題となった本がある。バイロン・シャープ著『ブランディングの科学』だ。
著者のシャープ氏は南オーストラリア大学の教授であり、マーケティングを統計的・数学的なアプローチで研究している同大学アレンバーグ・バス研究所のマーケティングサイエンス部門で、責任者を務めている。
近年マーケティング系のコンファレンスが盛んに行われていて、去年も筆者は広告主側のマーケティング担当者として、合宿型のものだけで3つに参加した。こうした機会を通じて、マーケティング担当者の間に広いネットワークが出来上がっているのだが、そうしたコンファレンスでも本書はしきりに話題に上っていた。
理由は2つある。1つは、この書籍が、長いこと信奉されてきたいくつものマーケティング理論に異を唱えていることだ。それは天動説に異を唱える地動説を思わせるほどの挑戦だ。
世界中の学術機関で使われているマーケティングの教科書を著し、「マーケティングの父」とも称されるフィリップ・コトラー教授の有名な理論に、「STP」と呼ばれるものがある。
セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの頭文字を取ったもので、市場を細分化(セグメンテーション)し、その中から狙うべき市場をターゲティングし、競合企業間での独自のポジションを決定するという理論だ。
例えば、朝食シリアルの市場を、「健康か、それともお菓子のようなおいしさを求めているのか」「主食にするのか、1品追加したいのか」という2つの目的を軸とした4象限に分類し、その中で「健康かつ主食」が目的の市場を狙っていくアプローチである。
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