新入社員の過労自殺という衝撃は、ついにトップの辞任にまで発展した。
2015年12月、広告代理店大手・電通の女性新入社員、高橋まつりさん(当時24)が過労を苦に自殺した件で、東京労働局は昨年12月28日、電通と高橋さんの当時の上司を労働基準法違反の容疑で書類送検した。
電通は翌29日、緊急会見を開き、石井直社長が1月に辞任する意向を表明。石井社長は「当局から指導をいただき対策をしてきたが、過重労働の抜本的な解決には至っておらず、深く責任を感じている。全責任を取り、来年1月の取締役会で辞任したい」と、終始厳しい表情で語った。
明確だった成長戦略
石井氏が社長に就任したのは11年4月、東日本大震災の直後だ。当時の電通は伸び悩むテレビ広告をはじめ、国内市場の鈍化に直面していた。また、メーカーなどの広告主がアジアや新興国に展開するうえで、電通自身も海外展開を急ぐ必要があった。
石井社長はこうした課題に手を打った。それまでの海外展開といえば、世界大手の仏ピュブリシスとの提携を軸に行ってきたが、目立った成果はなかったため12年2月に提携を解消。一方、13年3月には、約4000億円の巨額を投じて英広告会社イージス・グループを買収した。
その後、グローバル企業の案件獲得を目指して北米などで競合プレゼンテーションに参加。15年には食品大手・米モンデリーズの北米における案件を獲得するなど、世界的に無名だった電通の知名度は上昇しつつある。
さらに、最重要分野としてデジタル広告にも取り組んだ。国内では昨年7月、デジタルマーケティングの専門会社「電通デジタル」を設立したばかり。ITコンサルやビッグデータの活用、eコマースに力を入れてきた。海外でも、米国のデータマーケティング会社を買収するなど、年間400億〜500億円程度の枠を設けてデジタル広告企業を中心に買収を推進。石井社長の成長戦略は非常に明確なものだった。
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