雪の壁が道路の左右にそびえ立っている。5メートルはあるだろうか。立山の「雪の大谷」の20メートルには及ばないものの、トラックの車高よりも高い雪の壁はやはり迫力がある。
ここは中東の小国レバノン。標高2850メートルの峠は4月末に除雪を終え、5日前に通過可能となったばかり。雪解け水でぬれた路面を、レンタカーで慎重に進んでいった。
峠の手前でリフトを見かけた。冬はスキーリゾートとなるこの周辺には、絶滅寸前のレバノン杉が残る。
レバノンの国旗にも描かれているレバノン杉は、紀元前1500年ごろから地中海を支配したフェニキア人によって伐採された。これらは交易船の建材などに活用され、フェニキアは興隆を迎える。しかし、大量に伐採された杉は回復が難しく、激減した。
杉林を散策していると、修学旅行で来ていたレバノン人の女子中学生から「写真を一緒に撮って」と頼まれた。こんなおじさんと撮りたいとは、よほど東洋人が珍しいのかもしれない。
この周辺のカディーシャ渓谷は、世界文化遺産で「中東のスイス」と呼ばれる山岳リゾートだが外国人は少ない。ホテルのバルコニーから目の前の雪山を眺めているかぎり、中東にいるとは感じられない。
レバノンは岐阜県とほぼ同じ大きさの小国だが、レバノン山脈の峠を境に風景が一変する。峠の西側は地中海に面しており、ビーチリゾートが連なる。
一方で東側は荒涼とした砂漠。シリアとの国境近くには、武装組織「ヒズボラ」の拠点もある。残念ながら日本で伝えられるのはほとんど後者の姿だろう。
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