日本銀行は10月30日の金融政策決定会合で追加緩和を見送った。事前予測では、エコノミストのうち44%が追加緩和を見込んでいた。ほぼ五分五分の見通しの中で、現状維持を決定したことになる。
最大のポイントは物価見通しである。日銀はCPI(消費者物価指数、生鮮食品を除く)の前年比目標を2015年度プラス0.1%、16年度プラス1.4%に下方修正した。「2年・2%」(2年で2%の上昇率を達成)は黒田東彦総裁が掲げた超緩和策の旗印であったが、形骸化しつつある。特に足元の全国CPI(同)の前年同月比は、8月、9月ともにマイナス0.1%であった。つまり実態は再びデフレなのだ。
「展望レポート」では、「エネルギーを除くベースでは1%を上回るなど、物価の基調は着実に改善している」としている。いつから日銀の物価ベンチマークは、エネルギーを除くコアインフレ率になったのだろうか。状況によってベンチマークを変えることは、御都合主義の批判を免れない。
原油価格は上がらない
「展望レポート」の物価見通しの前提を見ると、「原油価格(ドバイ)については、1バレル=50ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて60ドル前半に緩やかに上昇」としている。しかし、この見方には疑念が残る。
EIA(米エネルギー情報局)は今年1月に発表した世界原油需給予測で、16年に原油需給がほぼ均衡するとしていた。ところが10月の予測では、16年第4四半期になっても日量112万バレルの供給過剰という見方に激変している。
サウジアラビアは市場シェア重視の石油戦略を発動中で、単年度の財政が苦境にあるにもかかわらず、10月も日量1000万バレルを超す高水準の原油生産を続けている。
背景には、従来指摘されている「米シェールオイル潰し」だけではなく、イスラム圏内の宿敵であるシーア派のイランや、中東でプレゼンスを高めるロシアの経済疲弊を継続させる狙いもあるようだ。つまり、サウジ新国王は、安全保障上の観点を重視しているものと思われる。
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