9月に筆者は「金融市場で散見される誤解が解消されるまでボラティリティは高止まりする」と書いた。こうした状況はまだ続きそうだ。
「FRB(米国連邦準備制度理事会)の利上げ見送りで金融政策の不透明感が高まった」といわれている。「今までFRBは米国のことだけを考えて金融政策を行ってきた」と信じている向きは、海外景気を考慮する政策スタンスに「見るべき要素が多くなった」と困惑する。
これは誤解である。FRBは利上げ見送りによって不確実性を高めたわけではなく、むしろ米国景気の下振れリスクを和らげたといえよう。
まず、米国の景気は顕著に鈍化しており、「米国だけを見ても」利上げは選択肢にはならない。政策金利との連動性が高い米国の鉱工業生産のトレンドは下向きである。ドル高が進んだのは2014年7月からだが、生産の6カ月移動平均値は14年6月が前年同月比3.1%で、その後14年12月~15年1月は同4.3%でピークを打ち、直近15年7月には1.9%まで鈍化した(図1)。これと整合的にコア・インフレ率も下向きだ。
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次にFRBはこれまでも海外経済を政策決定の要素としてきたはずだ。過去にFRBが利上げできたのは、新興国や南欧諸国のキャッチアップと投資ブームによって、米国景気のみならず、海外景気もよいという「裏」の条件が満たされ、世界経済全体の需要ギャップがプラスになっていたためだろう。
経済のグローバル化を指摘するのはいまさらだが、世界貿易量の世界生産に対する比率は15年が1991年の1.8倍、米国輸入量の米国生産に対する割合は2.3倍、新興国輸出量の新興国生産に対する割合は1.6倍である(オランダ経済政策分析局「世界貿易モニター」による)。海外景気は米国景気と連動しており、一方でグローバル化を信じるなら、他方でFRBが国際情勢を考慮することを否定できないはずだ。
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