6月10日に、元財務官である黒田東彦日本銀行総裁が「実質実効為替レートで見ると、今はかなりの円安」、「さらに実質実効為替レートが円安に振れていくということはありそうにない」と発言。一時は1ドル=125円台に達したドル高円安に歯止めがかかった。海外投資家の間ではこの発言について、円安進行をけん制することを意図したものか否かが話題になった。だが、より重要なのは、この発言は必然的なものだったということだ。
筆者が最初に異変に気づいたのは、5月13日の国会答弁で黒田総裁が「過度の円高は是正された」と発言したときだ。
米国やIMFの反応
折しも、ちょうどその頃に調査団を訪日させ、年に一度の4条協議に基づく経済調査を実施していたIMF(国際通貨基金)は、5月22日に調査終了の声明文を発表。その際、日本の経済政策が「円安に過度に依存する」リスクに警鐘を鳴らした。7月か8月に発表される報告書にも「円は過小評価」になったとの判断が出るだろう。
この表現は4月に為替報告書を米議会に提出した米財務省が、日本について「日銀の金融緩和への過度の依存は危険である」と警戒感を表明し、事実上の円安牽制を行ったときの表現にうり二つだった。
その米国では、4月にオバマ大統領がドル高への不満を示し、6月7~8日にドイツで開催されたG7サミットの際には「オバマ大統領がドル高は問題と発言した」との報道が流れ、ホワイトハウスが火消しに回る一幕もあった。
その間、米議会では、TPP(環太平洋経済連携協定)成就に必須とされるTPA(大統領貿易促進権限)法案に絡んで、貿易相手国の為替操作を禁止する条項が議論され、僅差で何とか否決された。
円安をめぐるこうした国際環境の変化を考慮すると、財務省で通貨政策のトップを務めた経歴を持つ黒田総裁が、長期的にはともかく、現段階でのこれ以上の円安加速はメリットよりも国際関係上のデメリットのほうが大きい、との考えを持ったとしてもまったく違和感はない。
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