身の回りのささいな情景に、社会問題が隠されていることがある。下世話な話ではあるが、読者が男性ならば、公共トイレで女性の清掃員が入ってくる現場に居合わせたことがあるのではなかろうか。あるいは、スーパー銭湯などで、男性脱衣所の清掃作業をしている女性を見掛けることもあるかもしれない。女性がそうした場所に入ってくることに抵抗感を持つ男性は少なくないはずだが、それは顧みられていない。ここには、「清掃は女性の仕事」という旧来の固定観念が作用しているように感じられる。
もちろん、総じて男女の職業の垣根は低くなってきている。たとえば、今から30年前に裁判官、検事、弁護士の法曹三者に占める女性の割合は5%に満たなかったが、最近では15%を超えている。20代後半の若手に限定すれば3割は女性だ。自衛官や警察官といった保安職でも女性の職員が徐々に増えつつある。とはいえ、いったん成立した性差による職業の垣根はなかなか容易には取り払えない。それは、社会における固定観念と深く結び付いていることが多いからだ。
保育士の仕事は1977年以降、男性にも開放されたが、現在でも9割以上が女性で占められている。男性が保育士を志望する際直面する問題が、給与水準の低さである。そのため、「将来家族を養うことができない」という理由から、その仕事をあきらめることがあるという。また、給与水準が低いために、せっかく就職した男性が離職することも少なくなく、結果的に女性の集中に拍車をかけている。「男性は家庭の大黒柱たるべし」という社会観念のため、給与水準は低いが自分に向いた仕事に男性が就かない状況があれば、そうした観念は男性の能力発揮を阻害していることになる。
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