テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点

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衝突したテスラ車からの映像。衝突によって前に走ってるトラックの助手席に乗っていた、10代の男性が死亡し、家族がテスラを提訴している。テスラ車は衝突直前までオートパイロットで、時速約100キロで走行していたという(写真:Benjamin Swanson via The New York Times)

2019年8月のある日。ベンジャミン・マルドナドさんは10代の息子を乗せてカリフォルニア州の高速道路を運転していた。サッカー大会の帰りだった。前を走っていたトラックが速度を落としたため、方向指示器を点滅させて右に車線変更した数秒後、マルドナドさんの運転するフォード「エクスプローラー」は、運転支援システム「オートパイロット」を使って時速約100キロメートルで走行していたテスラ「モデル3」とぶつかった。

衝突の一瞬前までテスラ車を減速せず

このテスラ車が撮影した6秒間の動画および同車に記録されたデータからは、オートパイロットも運転手も、衝突のほんの一瞬前まで車を減速させていなかったことがわかる。

オートパイロットとは、車両が自らステアリング、ブレーキ、アクセルを操るというテスラご自慢のシステムだ。警察の報告書によると、助手席に乗っていたジョバニ・マルドナドさん(15)はシートベルトを着用しておらず、車外に投げ出されて死亡した。

テスラの主力工場から7キロと離れていない場所で起きたこの事故は、テスラを相手取った訴訟に発展している。オートパイロット絡みの事故は本件も含め全体として増えており、技術的な欠陥を指摘する声が強まっている。ライバルメーカーが採用する同様のシステムの開発にも疑問符がつく可能性がある。

2003年に設立されたテスラとそのCEOイーロン・マスク氏は、自動車業界に派手な挑戦を挑み、熱狂的なファンや顧客を巻き込んで、既存の自動車メーカーも一目を置かざるをえない電気自動車の新たなスタンダードをつくり出している。テスラの時価総額は現在、大手自動車メーカー数社分を足し合わせた額よりも大きくなっている。

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