世界で「ピスタチオ」人気が密かに上昇中のワケ 世界的な需要増を見越して投資家も熱視線

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ピスタチオを栽培する容易さは、気候の変動にあまり影響されないということだ。気温が冬は摂氏マイナス30度から夏は40度の高温まで耐えることができるという。また灌漑しなくても育つ。スペインのように土壌が肥沃な国ではピスタチオを栽培するのにあまり手間がかからないということだ。

経済メディア「リブレ・メルカード」によると、収穫面だと採算ベースに乗り始めるのは4、5年目からで8年目から収穫率が非常に高くなって1ヘクタール当たり2000キロを収穫できるようになるという。10年目には1ヘクタール当たり9200ユーロの収入を得ることができるようになるとしている。

また、「イベロ・ピスタチオ」は、雨量に依存するという自然灌漑だと1ヘクタールあたり7200ユーロ、灌漑を施す場合だと11000ユーロの収入が得られるようになれば利益率はよくなると指摘している。8、9年以降は、利益が成長し続けるようになるとも言及している。

ピスタチオ栽培は収益性が高い?

カスティーリャ・ラ・マンチャ州によると、目下、ピスタチオの相場はキロ当たり6ユーロ60セント、オーガニックの場合は10ユーロから10ユーロ30セント。同州は、穀類やオリーブ、アーモンド、ワインなどの栽培と比較してピスタチオの栽培は非常に収益性が高いとしている。

スペインがオリーブとワインの産地だというのは、世界的によく知られているが、アーモンドの生産も盛んだ。生産量においてはアメリカがダントツで、年間およそ200万トンを生産しているが、スペインはこれに次いで2番目に生産量の多い国で、年間で20万トンを生産している。スペインにはアーモンドを主体にした伝統料理「ヌガートゥロン」もある。

経済紙「シンコ・ディアス」によると、スペインの2019年のピスタチオの輸出額は63万2000ユーロ(8400万円)、輸入は131万ユーロ(1億7400万円)と、需要に比べ生産量がまだ追いついていない状態だ。この意味でもスペインにおけるピスタチオ栽培は伸びしろがあると言える。

冒頭のとおり、投資家もピスタチオには熱視線を送っている。例えばポルトガルの農業ビジネスへの投資を手がけるポルトガルのツリーモンドグループは、投資銀行GBSファイナンスの仲介で、ワインで知られるオズボルネグループから今年1000ヘクタールの耕地を購入。ピスタチオの栽培に充てる目的だ。またツリーモンドは、近い将来ポルトガルとスペインで6000ヘクタールの土地を購入してピスタチオの生産量の拡大を目指しているという。

また、ドライフルーツ専門のスペイン企業ボルヘスも724ヘクタールの耕地を購入してアーモンド、クルミ、ピスタチオの栽培に充てるとしている。「ピスタチオビジネス」ははたしてどこまで広がりを見せるだろうか。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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