・落ち着きを失い、ときに激昂し暴言・暴力をふるう
・記憶力や思考力などの認知機能が低下する
万引きを繰り返したのは認知症のせい
兵庫県立ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長の小田陽彦医師のもとには、認知症やそれに付随するさまざまな問題を抱えた患者がやってくる。
70歳代の女性患者が「自分は認知症ではないか?」とやってきたのは2015年11月だった。50歳代のころから、うつ病で総合病院精神科での入退院を繰り返していた。この間、万引きをする盗癖がおさまらず、何度も警察沙汰になった。本人は「やってはいけないとわかっている」と言う。認知症検査であるミニメンタルステート検査(MMSE)では30点中24点。23点以下は認知症が疑われる。小田医師は「行動異常型前頭側頭型認知症」を疑った。だが頭部をMRIで調べたが、萎縮などの症状は見つからない。
「もしかしたら、薬剤起因性老年症候群かもしれない」
老年症候群とは、高齢者の老化現象が進むことを意味し、薬剤によってもたらされることを薬剤起因性老年症候群と呼んでいる。認知機能の低下(薬剤性認知障害)のほか、過鎮静(過度に鎮静化され寝たきりになるなど)や歩行困難などの運動機能低下、発語困難、興奮や激越(感情が激しくたかぶること)、幻覚、暴力、さまざまな神経・精神症状のほか、食欲不振や排尿障害といった副作用が表れることを指す。日本老年医学会なども最近になって使い始めた言葉だ。