入試不正で「現役医学部生」が声を上げる事情 「入試差別の会」が会見、大物弁護士も参戦
同じ学生団体のメンバーで東京慈恵会医科大学4年生の姫岩翔子さん(25)は、慈恵医大に合格するまで、国立大学を含め多くの医学部を受験したという。
「私が受験で差別を受けていたかどうかはわからないというのが正直なところ。ただ、差別していると噂のあった大学で実際に差別があったので、どうしても疑心暗鬼になってしまう。これから受験する人のためにも一刻も早く真相解明をしてほしい。受験要項に『属性で差別する』と書いてあったらどうするか? その大学を受験する人はだれもいなくなると思う」(姫岩さん)
ただ、今後の被害者救済は困難を極めそうだ。第1に被害の形がさまざまだ。医学部受験に失敗し現在も浪人中、医学部を諦めて他学部に進学、別の医学部に合格し現在医学部生など、被害者の置かれている状況が異なる。
また、国立大学で受験における差別があれば直ちに不当だと言えるが、私立大学では必ずしもそうではない。河合弁護士は「私立大学は(私学助成金など)国家の補助を受けている。私立も公立みたいなものだから、憲法上禁止されている差別をしてはならない」と強気の姿勢だが、法廷でどこまで争えるかは不明だ。
多浪生への差別となるとさらに難しさがある。たとえば司法試験では3回失敗したら受験資格を失う制度がある。「司法試験とは問題が違う。人の命の問題に関わりたいという人を差別するのは良くない」と河合弁護士は言うが、どうも歯切れが悪い。
問われる情報開示の姿勢
福島県立医科大学6年生の竹口優三さん(30代)は、社会人を経験した後に一念発起。4浪以上に相当する年齢で合格したが「(多浪生の差別が明らかになった)昭和大学、東京医大には複数回、2次試験で落とされたので、私は被害者だと思っている。どの大学がどんな不正をしたのか、文部科学省の最終報告ではきちんと情報公開してほしい」と語った。
文科省はこの会見の前に全国医学部調査の中間報告を発表しているが、不正をしていた大学名は伏せている。河合弁護士は、「中間報告があるから最終報告があると思ったら大間違い。日本の行政は最終報告をときどきさぼる。最終報告を出せというのもこの会がすべき運動のひとつ。情報開示請求などの手段を使って戦っていくべきだ」と指摘した。
「多浪生、女性には狭き門」と噂されてきた順天堂大学は10月18日、第三者委員会を設置し、不正の有無を調査している。男性の合格率が女性よりも高い医学部は順天堂大以外にも数多くある。どこまで真相究明がなされるのか。それは受験シーズンまでに間に合うのか。文科省、各大学の本気度が試されている。
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