懲りない日本貨物航空、「不適切整備」で処分 史上初、「連続式耐空証明」取り消しの衝撃
事業・業務改善命令を受けて記者会見したNCAの大鹿仁史社長は「航空会社の最大の使命である安全運航に影響を及ぼしかねない法令違反があったことを深くおわびする。厳重注意に対する認識が甘かったと反省している」と語った。NCAは弁護士を交えた調査委員会を設置し、今後原因究明を行う方針だ。
今回の命令で、NCAは当面の間、自社による機体整備を禁じられたほか、飛行に必要な検査を毎年受けなくてよい連続式耐空証明が取り消された。これにより、機体整備は他社に委託せざるをえないうえ、検査に備えて機材のやり繰りも逼迫する。
NCAは今回の行政処分を受ける前の6月中旬、整備記録の確認等のために全11機の運航を一時中止している。今月に入って2機の運航を再開したが、残りの機体は「安全性を確認した後に順次再開する」(大鹿社長)というが、現時点ではメドはたっていない。
そのため、NCAでは他社から機体をチャーターするなどの対応を行っている。大手半導体製造装置メーカーも「代替の航空会社への切り替えができておりほぼ影響はない」(東京エレクトロンなど)としている。とはいえ、運航再開が長引けば顧客離れは避けられない。
定時運航のプレッシャーはなかったのか
親会社の日本郵船にしても今回の事態は大きな誤算となる。NCAが手掛ける航空運送事業は今2019年3月期に経常利益15億円を見込んでいたが、運航停止による減収や整備費などのコスト増により黒字確保も難しい状況になりつつある。
NCAは長らく赤字で低迷していた。2008年3月期~2010年3月期は100億~200億円単位の経常赤字を垂れ流し、その後も何度か赤字に転落する年度があった。当時の損失を引きずり、2018年3月期末は856億円の債務超過だ。
ただ近年は航空貨物の荷動きが活発化。郵船全体の経常利益予想400億円に占める割合は小さいとはいえ、主力の船舶事業は市況変動の影響が大きい。NCAが担う航空貨物事業は安定収益源として期待されていた。
こうした好業績もあり、整備現場が定時運航を優先したことが今回の事態を招いた遠因ではないのか。大鹿社長は「その可能性は考えられる。現場整備に対しては運航を止めることを躊躇するなと言ってきたつもりだが、結果としてそういうプレッシャーがあったなら浸透していなかったと言わざるをえない」という。
整備人員も十分ではなかった可能性もあるだけに、現場への重圧が“忖度”につながったとすれば安全運航、法令順守に対する徹底は経営陣のみならず営業現場を含めた組織全体に必要となる。
大事故につながる前に発覚したことを幸いとして、NCAは一から出直す姿勢が問われる。
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