アメリカの「対中国製品制裁」は愚策過ぎる 自らの首を絞めるだけの結果に

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では、制裁関税が無力なのだとしたら、どうやって中国のルール違反に対抗していけばいいのか。前オバマ政権で設置された大統領科学技術諮問委員会(PCAST)が、いくつかの対策を提示している(筆者も委員の一人だった)。

PCASTの報告書は中国の脅威から米国の半導体産業を守ることを目的としており、次のように勧告した。まず、同盟国と協力して中国に圧力をかけ、WTO(世界貿易機関)ルールを順守させること。

次に、欧州連合や日本・韓国・台湾の例に倣い、中国に半導体関連の特許が流出したり、関連企業が中国に買収されたりしないように監視を強めることだ。現在、外資による米国企業の買収を安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限強化が進みつつあるが、これはPCASTの勧告内容とも一致する。

すべては米国のイノベーション力にかかっている

一方でPCAST報告は、米国には中国が巨額の補助金を投下してハイテク産業を育成するのを止める権限はないとも指摘している。それに、中国の技術革新やコスト削減は米国の消費者にも恩恵をもたらすので、一方だけが得をするゼロサムゲームとはならない。米国にとっての課題とは、中国をWTOのルールに従わせ、特許侵害や技術移転の強要といった真のゼロサムゲームをやめさせることであって、中国のハイテク産業の発展を妨げることではない。

最後に、PCAST報告は、米国自身が産業政策を持たねばならないと強調している。結局のところ、米国が中国の脅威に打ち勝つことができるかどうかは、米国がイノベーションを維持し続けられるかどうかに懸かっているのだ。

歴史は「ツキディデスのわな」に満ちている。新興の大国が台頭し、既存の大国との間で緊張が高まると戦争に発展するという理論だ。ハイテク分野の覇権争いが過熱して米中がこのわなに落ちるのを防ぐためにも、緻密で洗練された通商政策が求められている。

ローラ・タイソン 米大統領経済諮問委員会元委員長

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Laura Tyson

米カリフォルニア大学バークリー校教授。ロック・クリーク・グループのシニアアドバイザー。

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