マツダ「アテンザ」新車レベルの大改良とは? マツダ
マツダは、フラッグシップモデルの「アテンザ」を改良し、2018年5月24日に予約受注を開始した(発売は6月21日を予定)。2012年の現行モデルの登場から、今回が4回目の改良となるが、同社国内広報部長の永井義一氏によれば「今までで最大の改良」だという。
「当社は、現在すべての車種でほぼ毎年商品改良を行い、機能ごとに最適構造を共有化して水平展開させています。最新の技術やデザインを惜しみなくつぎ込んでクルマの鮮度を保つことを目的としているためで、マイナーチェンジのためのマイナーチェンジはしていません」(永井氏)
ではなぜ、今回のアテンザで「最大の改良」を施したのか。商品本部主査の脇家満氏は「SUVシフトが進む現状に危機感を覚えている」としたうえで、こう説明する。
「マツダは、セダン系をしっかり開発するところからつねにスタートしてきました。セダンやステーションワゴンしか持ちえないクルマの本質を見極めることで、クルマの理想的な価値が生み出せると考えているからです」
セダンの技術開発を極めることで、マツダが掲げる「人馬一体」のクルマづくりを実現したい――。そんな思いがあるからこそ、フラッグシップであるアテンザの改良に、次世代の思想や技術を取り入れ、デザインだけでなく質感や走行性能、安全性能まで幅広い領域の見直しを行ったのだ。
成熟した大人のデザインを追求
では、改良ポイントを見ていこう。まずデザインは、「Mature elegance」(Matureは成熟の意)をキーワードに上質なエレガンスを表現している。パッと見て気づくのは”顔”の変化だ。フロントグリルは従来の6本フィンからメッシュになった。単なるクロスメッシュではなく、ポーションの向きを工夫して光の受け方にバリエーションを生み出し、重厚な立体感を演出している。また、バンパー部分だけ色を変えていたのをすべてボディ色にするなど、質感を高めて重心を下げた。ライトを含めフロント部分の彫りを深くし、前後に貫くラインを引くことで、より洗練されたフォルムに仕上がっている。
「マツダがずっと表現しようとしているスポーティエレガンスをより強めたデザインにしました。低重心で彫りの深い造形にしたのは、アテンザの走りのフィーリングの進化や質感の向上を表現するためです」(デザイン本部チーフデザイナーの玉谷聡氏)
「新車を開発するくらいのエネルギーを費やした」と玉谷氏が胸を張るインテリアにも注目したい。とりわけ印象的なのは、インパネからドアトリムまでなめらかにつながっている点だ。そのためにセンタールーバーとサイドルーバーの高さをそろえ、ヒーターコントロール部分もワイドかつスリムに仕上げた。しかも、従来型よりも100mm以上空間が広がって感じられるようにデザインされている。サイドカバーの樹脂部分のボリュームを減らすことで、シートの座面も広くなった。
質感にも配慮し、上級機種の「L-Package」では、東レが開発したつやとなめらかな風合いを併せ持つ新素材「ウルトラスエード® ヌー」を自動車で初めて採用。センノキを使用した本杢(ほんもく)パネルやナッパレザーを取り入れるなど、複数の素材を巧みにコーディネートして日本の伝統と先端技術を融合させ、上質な空間を生み出すことに成功している。
静粛性向上のため車体や内装も見直す
快適さという点では、操縦安定性や乗り心地の良さを進化させているのも見逃せない。「Effortless Driving(エフォートレス・ドライビング)」をコンセプトに、シートやサスペンションシステムの構造を一新したほか、ブリヂストンとタッグを組んでタイヤも新たに開発。ドライバーの期待通りにステアリングが反応する確かな操縦安定性を実現させた。
「エフォートレスとは、『努力を要しない』『ラクに』といった意味です。初心者から熟練ドライバーまで、誰もが思い通りに運転でき、助手席や後ろの席に乗っている人も快適に過ごせるクルマを目指しました」(前出・脇家氏)
さらに、静粛性の向上にも力を注いでいる。「声が”透る”洗練された空間」を目指し、これまでは他社製品と比較して性能アップを求めていたのを、独自基準「静粛ゾーン」を設定して絶対的な価値を追求。音を感じるメカニズムを徹底分析し、車体から内装まで見直しを図った。その結果、現行アテンザよりも大幅に『会話明瞭度』がアップし、より会話を楽しめるクルマになったのだ。
「人間中心」の開発哲学を貫く
内燃機関のたゆまぬ進化に取り組んでいるマツダの矜持は、エンジンの進化にも表れている。現行アテンザに搭載している3つのエンジンすべてに新技術を導入。中でも「SKYACTIV-G 2.5」は、気筒休止技術を採用することで走りと低燃費を高い次元で両立させている。
安全領域にも、マツダの最新技術を投入。アクセルやブレーキを踏まなくても前方車との車間距離を車速に応じて一定に保つ「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)」を搭載しているほか、ヘッドライトはLEDユニットを20分割化させて夜間視認性を向上。夜間の歩行者検知機能も強化させた。
これらすべての改良ポイントに貫かれているのが、人間の特性や感覚を徹底的に研究した「人間中心」の開発哲学。その底を流れるのは、「クルマを愛するお客様の毎日をもっと活力と充実感に満ちたものにしたい」(前出・脇家氏)という思いだろう。まさに、単なる移動手段ではなく「走る歓び」が得られるクルマ――。クルマ好きならずとも、まずは試乗してその性能の確かさを体感せずにはいられないはずだ。