「首脳会談失敗」なら予期される次のシナリオ 可能性高まる米朝「電磁パルス」合戦の脅威

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2017年9月22日、北朝鮮の李容浩外相は、太平洋での水爆実験の可能性にも言及した。北朝鮮の強い政治的意志と高度な軍事的能力を誇示するために、様々な弾道ミサイルを躊躇なく使用することも容易に想定される。その場合、日本を飛び越えるコースで大気圏内において核爆発させる電磁パルス攻撃は、日本の米軍基地や自衛隊基地の使用を物理的に困難にするとともに、日本の政治機能、社会インフラを混乱させるための非常に有効的なツールに他ならない。また、電磁パルス攻撃は、北朝鮮の意志と能力を国際社会に見せつける上で、非常にインパクトの大きいものと言えるであろう。現に北朝鮮は2017年9月3日の『労働新聞』で、水爆実験の成功を誇示するとともに、電磁パルス攻撃の可能性にも触れている。

米国の最新兵器「チャンプ」

一方、米軍においても、北朝鮮の電磁パルス攻撃と似て非なる最新兵器についての検討がなされている。それは、「非核型対電子装置高出力マイクロ波発達ミサイルプロジェクト(Counter-electronics High-power Microwave Advanced Missile Project =Champ)」と呼ばれる兵器。この通称「チャンプ」とは、ドローン型の電磁パルス兵器であり、空中発射用の巡航ミサイルに搭載し、これを爆撃機から発射する。そして強烈なマイクロ波を照射して、標的としたコンピューターや電子機器のみを破壊するものである。北朝鮮が核兵器を使用する前に、それを無力化できると言われている。

この非核型電磁パルス兵器「チャンプ」をいつでも使えるという意志と能力があることを明確に国際社会と北朝鮮に示すことは、抑止効果を発揮し、対話と交渉を通じた朝鮮半島問題解決の糸口を得ることに繋がるかもしれない。その名が示すように、勝利者(チャンプ)のためのツールである。 

今後の米朝による対話と交渉において、北朝鮮は、体制の維持とともに何を要求してくるであろうか。核放棄をちらつかせて、在韓米軍の無条件撤収、人道支援、経済援助、平和協定締結など、いつ何をどの程度の条件で突き付けてくるか、それに対し米国や中国、韓国、そして日本はどのようなカードを切ることになるか。

これまで、こうした対話と交渉の主導権をとってきたのは米国のように見えて、実質的には北朝鮮だったと言えるのではないか。対話・交渉という名の単なる核・ミサイル開発のための時間稼ぎであったと批判が出る所以である。

そうした経緯を踏まえ、今回こそは北朝鮮に主導権をとられることのないよう、電磁パルス攻撃を受けるという最悪のシナリオとなることがないよう、対話と交渉の主導権を、米国をはじめとした国際社会がしっかりとるための結束が、これまで以上に求められている。

文:下平拓哉 防衛省防衛研究所理論研究部主任研究官兼特別研究官付(政策シュミレーション)

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「Foresight」編集部

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