はたしてトランプ大統領は弾劾されるのか? 特別検察官任命までの流れを詳しく解説

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こうした事態を受け、司法省はロシア政府の大統領選挙干渉の捜査を行う独立した検察官を任命し、捜査をFBIから分離して行うことを決めた。ロバート・モラー元FBI長官が特別検察官に任命された。モラー氏はジョージ・W・ブッシュ政権とオバマ政権の下で2期12年(2001~2013年)、FBI長官のポストにいた人物である。FBI長官の再任は禁止されているが、同氏の場合、議会で再任を認める法律を成立させて、実現している。それだけ信頼の厚い人物といえる。

モラー氏を指名したローゼンスタイン司法副長官は「私は権限を行使して、本件の責任を負う特別検察官を指名することが公共の利益にかなうと決断した」という談話を発表。ホワイトハウスの報道官は、特別検察官任命の命令の署名後にホワイトハウスに連絡が入ったと説明している。これは、事前にホワイトハウスと調整することなく決められた人事であることを意味している。

特別検察官は単にロシア政府の大統領選挙への干渉以外に、トランプ政権のさまざまなロシアコネクションも捜査対象にすることになる。その権限は絶大である。多くの疑惑が詳細に調査されることになるだろう。

共和党内でも弾劾やむなしの声

さらに別の動きも出てきている。共和党議員の中にもトランプ大統領の弾劾を求める声が出始めたことだ。今まで、共和党はトランプ大統領の問題発言、問題行動をかばってきた。8年間の民主党大統領の後にやっと誕生した共和党大統領を守るという意識が強かったのだ。

だが、今回の一連の出来事を受けて共和党のジャスティン・アマシュ下院議員は「トランプ大統領がコミー長官に圧力をかけたことが事実なら、それは弾劾に値する」と発言。同じく共和党のウォルター・ジョーンズ下院議員も「コミー・メモが正しければ、大統領の弾劾に進む可能性がある」と語っている。共和党のカルロス・カーベロ下院議員は「司法妨害は大統領弾劾に値する。ニクソン大統領とクリントン大統領の弾劾はいずれも司法妨害が理由であった」と、今後、事態が大きく進展する可能性を示唆している。

こうなると、弾劾が実現するかどうかは別にしても、トランプ大統領の政治力が大幅に低下することは否めない。

中岡 望 ジャーナリスト

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なかおか・のぞむ / Nozomu Nakaoka

国際基督教大学卒。東洋経済新報社編集委員、米ハーバード大学客員研究員、東洋英和女学院大学教授などを歴任。専攻は米国政治思想、マクロ経済学。著書に『アメリカ保守革命』。

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