希少な日本限定モデルが誕生 モリッツ・グロスマン
ドイツ東部の古都ドレスデンは、かつてのザクセン王国の首都。ここから車で30分ほど南下すると、ドイツ時計産業の中心地グラスヒュッテがある。この地に時計産業が持ち込まれたのは1845年のこと。フェルディナント・アドルフ・ランゲが弟子とともに時計産業を興し、現地の人々に時計作りのノウハウを教えていった。この地はかつて銀鉱山で栄えた街であり、精密な道具を自製した手工業の歴史があったため、手作業を得意とする人材がそろっていたからだ。
グラスヒュッテは時計産業の中心地であるスイスから遠く離れていたため、時計パーツを購入することができない。そこで弟子たちをそれぞれの部品のサプライヤーとなるよう独立を促し、街全体を大きな時計工場と見なした。こうすることで品質は安定し、さらには3/4プレートに代表される独自のグラスヒュッテ様式も完成した。その品質とブランド力の高さはスイスにも届くほどで、高級精密時計の産地として名声を博していく。
スイスやフランスの時計製造技術をドイツで理論的に伝えるべく、今度はグラスヒュッテに時計学校を設立した。その指揮を執り、初代校長となった人物こそが、1826年にドレスデンで生まれた時計師モリッツ・グロスマンである。
偉大なる時計師の哲学を受け継ぐ
時計ブランド「モリッツ・グロスマン」は、自身も時計職人であったクリスティーネ・フッターが個人の時計愛好家からの支援を受け、2008年に立ち上がった。卓越した技術と高品質の素材を基に、最新鋭の製造方法と伝統的な手仕上げを融合させ、現代的なクラシックウォッチを提案するブランドである。
特徴は呆れるほどに手間をかけた時計作りにある。例えば針は職人が一本ずつ手作業で磨き上げている。ムーブメントも当然ながら自社製で、微細なネジを含むすべてのパーツにそれぞれの仕上げを施している。その精巧でマニアックなディテールは、すでに熱心な時計愛好家の心をとらえており、特に日本での人気の高さは群を抜いている。
「ベヌー・ピュア ジャパンリミテッド」は、ブランド発足第一弾モデルである『ベヌー』をベースに、1930年代のオーダーウォッチをイメージしてケース素材にステンレススチールを採用。さらにブランド初のブラックダイヤルを使用し、素材はゴールドモデルと同じソリッドシルバー製だ。リューズを引き出すとムーブメントが停止し、リューズはバネで自動的に戻るためケースの中に埃や水蒸気が侵入することはない。しかも4時位置プッシュボタンを押すと針飛びすることなくムーブメントが再び動き出すので、より完璧な時刻合わせが可能になる。重厚な歴史と丁寧な手作業、そして独自性の高い機構を融合した「ベヌー・ピュア ジャパンリミテッド」は、20本のみ生産される希少品。時計愛好家であれば、見逃せないモデルとなるだろう。