「夏の甲子園中止」を嘆く大人たちに欠けた視点

新しい野球への転換をできるのは今しかない

甲子園に出場できるのは、全国4000校弱の高校野球部のうち、49校、1%強だ。14万人あまりの野球部員のうち、甲子園の土を踏むことができるのは最大で882人。0.6%ほどだ。

多くの高校球児にとって、甲子園は無縁のものであり、地方大会が「引退」の花道だった。もちろん、それでも中止になれば残念だろうが、気分を切り替えて大学受験や就職を考えるだろう。

世間では「何とかやらせてやりたかった」と言う声が高まっている。署名活動も行われており、中には秋季に甲子園をやってはどうかという声さえある。

しかし一度中止が決まれば、多くの子どもたちは次のフェーズに進もうとする。遅ればせながら甲子園で野球ができても、その時には子どもたちの視線は既に「未来」を向いている。誤解を恐れずにいえば「甲子園でやらせてやりたい」は、高校野球を神聖視する「大人の感傷」にすぎないのだ。

秋以降のほうが問題は深刻ではないか

それよりも心配なのは「秋以降」のことだ。

日本高野連の八田会長も「秋には都道府県で大会が予定されている。感染状況がつかめないので、その時に考えたい。それまでは情報収集に尽きると思う」

と言及しているが、多くの感染症の専門家は、今秋に新型コロナウイルスの第二波がくると予想している。管見の限りでは「秋には感染は収束し、普通の生活ができる」と言っている専門家は一人もいない。

そうなれば、秋季大会も厳しくなってくる。

秋季大会は、全国の都道府県で9月中旬から11月の土曜、日曜に開催されている。この大会の上位校が全国9地区の地区大会に進出するが、秋季大会で優秀な成績を残した高校から翌春のセンバツ高校野球の出場校が選出される。実質的な「春の甲子園」の予選なのだ。

つまり、秋季大会が開催できなければ、翌2021年のセンバツ高校野球の開催も不可能になるのだ。

これを考えれば「甲子園に出られなかった球児のための代替試合」を夏季に組むのではなく、本来の秋季大会に相当する試合を、今から計画すべきではないだろうか。

八田会長は「その時に考えたい」と言ったが、今年の春夏の甲子園のように、ぎりぎりまで事態を見極めていたら、今の2年生の高校球児も、来春の甲子園に挑戦する機会を失ってしまう。

プロ野球は6月下旬以降に公式戦を「無観客試合」で始めようとしているが、仮にそれが可能な状況になるのなら、選抜の予選に相当する都道府県単位の大会を、それぞれの地方の実情に合わせて開催することが考えられる。無観客で十分な防疫体制を組むのが大前提だ。

本来、秋季大会は3年生が引退し、2年生以下の新チームで行うが、特例的に3年生の出場も認めれば、代替試合の役割も果たすことができる。

次ページこれを機に中長期的計画を策定したほうがよい
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