中長期的には合理的だと考えている。それでも、数字で説明できないために投資を決裁できない——。企業の意思決定におけるこうした状況に、COTEN代表の深井龍之介氏は問題意識を持つ。
数値化は、比較や判断を助ける重要な手段だ。しかし、数値で説明できるものだけが投資対象になると、必要だと考える取り組みにも資金を振り向けられなくなる。100年先にどんな社会をつくりたいかを構想しても、四半期の業績に左右され、短期の判断にとどまってしまう。この制約をどう乗り越えるか。
ポッドキャスト番組「COTEN RADIO」の運営で知られるCOTENは、今年、設立10周年を迎えた。事業の核に据える世界史データベースの構築に加え、人文知を経営判断に生かすコンサルティングも手がけている。人文知とは、歴史や哲学、文学など、人間や文化、社会を探究する学問から得られる知識や知恵を指す。
AIが社会を大きく変えようとする中で、企業はどんな未来を構想し、そのために何へ資金や人材を振り向けるのか。深井氏は、その判断にこそ人文知が必要だと考えている。2026年10月に開いたメディア向け説明会では、企業に具体的な投資を呼びかけた。
AI時代、企業も社会の未来を考える
深井氏が危機感を抱くのは、AIが自ら新たなAIをつくるようになる可能性と、それによって社会が大きく変わることだ。人間がその振る舞いを十分に管理できなくなる可能性も含め、備えが必要だと見る。
AIの安全性を高める研究への投資は行われている。ただ、技術的な安全対策は十分なのか。そして、AIとともに生きる社会をどうつくるのかという議論にも、十分な資金や知見が投入されているのか。深井氏は、その双方に課題があると考えている。
「まずは、どんな社会をつくっていきたいのかを再構想することです。そのためには歴史を知らなければならないし、人文知が必要になる」
そこで期待を寄せるのが企業だ。技術力や資金力、人材を集める力を持ち、社会への影響力を増してきた企業も、未来を構想する主体になる必要があるという。


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