国防、公教育、インフラ整備、福祉など、国家が担う役割は引き続き重要だ。そのうえで、社会の課題を国家だけに委ねず、企業も自らの力をどう使うかを考える。顧客のニーズを満たして利益を上げることに加え、自社の活動を通じてどんな社会をつくりたいのかを問い、行動することを求めている。
経営判断の前提を、人文知で問い直す
そのためにCOTENが進めているのが、社会とその一員である企業のあり方を、前提となる価値観から捉え直す調査だ。
具体的には、異なる時代や地域の歴史や思想をたどり、今の社会や企業で「当たり前」とされている考え方や仕組みが、どのように生まれたのかを調べる。それらが現在の課題にどう関わっているかを探り、経済学・経営学の知見や企業の実例とも照らし合わせながら、新たな価値の捉え方や、これからの社会・企業の可能性を検討している。
もちろん、企業が倫理に目を向け、活動の意味や価値を問い直すべきだという議論は、以前からある。COTENで歴史調査にあたる品川皓亮氏は、ESGやSDGs、インパクト投資などをその実践として評価する一方、なお見落とされている前提があるのではないかと考えている。
具体例として取り上げるのが「定量化」だ。
数値化は、複雑な現実を比較しやすくし、判断の根拠を共有することを可能にしてきた。一方、数字で捉えられるのは現実の一部でもある。ある指標を重視することで、そこには表れない価値が意思決定から抜け落ちることがある。
COTENが問うのは、定量化の特徴や限界を意識しないまま、数値で示された情報を優先し、それ以外の情報の重要性を下げてしまう姿勢だ。定量化の歴史をたどることでその働きと限界を捉え直し、数字だけでは説明しきれない投資についても判断の根拠を共有できるようにすることを目指す。
その手がかりとして、東西の多様な思想にも目を向けている。言葉や数値によって説明する「言語知性」と、身体や経験を通じて培われる「身体知性」も、その一例だ。禅で重んじられる身体を通じた理解や、料理人の技のように、言葉だけでは伝えきれない知にも着目する。
こうした異なる視点を取り入れ、数値では捉えきれない価値をどう判断に生かすか、企業内でどのように合意をつくるかを探る。中長期的に合理性があると考える投資を実行できるよう、意思決定のあり方を経営の現場に実装していこうとしている。


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