読書というと、「知らないことを覚える」「知識を増やす」というイメージが強いかもしれません。
もちろん、それも読書の大きな価値ですが、私は、読書にはもうひとつ、「知的探究のきっかけ」になるという大切な役割があると考えています。
本を読んでいて、「あっ、そういえば以前こんな話を聞いた」「いや、それは違うのではないか」「えっ、そんな考え方があるのか」と心が動く。
そこで終わらず、「なぜ私はそう感じたのだろう」と考えてみる。
それだけでも、書かれている情報をただ受け取る読書から、自分なりに考える読書へ変わっていきます。
拙著『東大合格者が身につけた 一生使える「読み方スキル」』では、こうした感情を手がかりに考えを深める方法を「知的探究読み」として紹介しています。
読書は、一人でも知的探究を進められる道具になるのです。
本は「考えるきっかけ」をくれる
もうひとつ、読書で大切なことは、一度得た答えを絶対のものにしないことです。
世の中は変化します。新しい研究やデータが出れば、以前は正しいと思われていたことが更新される場合もあります。
同じ問題でも、時代や国、立場が変われば、答えが一つに決まらないこともあります。
私は生徒たちにも、安易に答えを一つに決めつけず、「一つの正解を唯一絶対のものと思わないこと」を大切にしてほしいと伝えてきました。本の内容も一つの情報、一つの意見として受け止めながら、「新しい本」「新しい知識・情報」に触れ、自分の考えを更新し続けることが重要です。
AIも同じではないでしょうか。
「AIが答えを出してくれるから、自分は何も知らなくていい」と考えてしまうと、目の前に出された答えを比較したり、疑ったり、別の考え方とつなげたりする材料が少なくなってしまいます。
一方で、本を読み、さまざまな人の考えや知識に触れている人は、「これはあの話とつながる」「別の考え方もありそうだ」「ここから、もう少し考えてみたい」と、答えの先へ進むことができます。
ただ「正解を覚える」ためではなく、「一つの答えを唯一の正解だと思い込まず、自分で考え続けるための材料を増やす」のが、AI時代の読書の大きな目的なのです。
そう考えると、本を読むことの価値は、むしろAI時代には、今後さらに大きくなっていくのではないでしょうか。


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