2013(平成25)年4月には、東京都の「不燃化特区」に指定されている。不燃化特区は地震や火災の危険度が特に高い地区を指定し、建て替えの支援などを重点的に行う制度だ。この地区では、都市計画道路・補助46号線の整備に合わせて沿道の建物の不燃化や共同化が進められ、2015(平成27)年12月には地区計画も定められた。2棟以上の建物をまとめて建て替える防災街区整備事業も行われている。
一方で田園都市として計画的につくられた洗足駅周辺は防災上の危険性が低く、街をつくりかえる理由がない。
商業需要が見込みにくい
また洗足駅は利用者が少なく、周辺に強い商業地がある。
2025年度の1日平均乗降人員は、洗足駅が1万4617人。隣の西小山駅は3万4136人、大岡山駅は2万2304人、2駅先の武蔵小山駅は5万5596人だ。(東急電鉄公式サイト)
買い物の場は、商店街の規模が大きい西小山が徒歩圏内にあり、電車ですぐの武蔵小山や自由が丘、目黒もある。
市街地再開発事業は、新たにつくった床(保留床)を売却して事業費をまかなう仕組みだ。その床を埋める商業需要が見込みにくい洗足では、事業として成り立ちにくい。
そして、住民の側からも再開発の声が大きく上がることはなかった。
洗足の住民は街の環境が変わることに敏感だった。1971(昭和46)年には、マンション計画に対して「洗足シュロス反対の会」(6階建て)と「洗足マンション反対の会」(9階建て)が反対運動を起こした。前者は補償金の支払いで決着し、後者は計画が中止になっている。
前編で触れたように、翌1972(昭和47)年ごろを境に土地の細分化が加速し、小規模な建売住宅が急増していく。街が大きく変わり始めた時期に、住民はすでに中高層の建物に抵抗していたのだ。


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