なぜ私たちは「盆栽といえば松」だと思ってしまうのでしょう?
著書『世界のビジネスエリートを惹きつける 教養としての盆栽』が話題となっている依田徹氏が、松の盆栽がとりわけ好まれる理由について解説します。
なぜ盆栽といえば「松」なのか?
「なるほど、これがゴヨウマツなんですね!」
さいたま市大宮盆栽美術館が開館した頃、私も開館直前に身に付けたばかりの知識ではありましたが、よく松の種類について解説していました。
ところがそんな付け焼き刃な解説でも、これがなかなか好評でした。実際、ほとんどの日本人は松の見分け方を知らないかもしれません。
盆栽鑑賞の基本として、まずは松をはじめとする樹種の知識を紹介します。
盆栽にはいろいろな樹があるのですが、一つ挙げろと言われたら、やはり松と答える人が多いでしょう。
漫画やアニメに出てくる盆栽はほとんど松ですし、盆栽を記号化しようとする際にも、必ず松からデザインが作られます。
では、なぜ松なのでしょうか。
松は常に青々とした葉をつけている常緑樹であり、永遠や長寿を象徴する樹とされます。中国では寒さに耐える姿が高潔な君子のようだと好まれ、「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」、いわゆる松竹梅の筆頭ともされました。
日本では正月飾りに使われており、よく結婚式でも謡われる謡曲「高砂」も、松を題材としています。
翁(おきな/老いた男性)と媼(おうな/老いた女性)が登場するのですが、二人は実は松の樹の精霊で、夫婦仲円満に老年を迎えたことを祝う内容となっています。
このように松は、東アジア全域で好まれてきた縁起のよい樹なのです。
しかし盆栽で松が好まれるのには、それ以上に明確な理由があります。


