では、従来の保険会社などのように、全国どこにでも転勤する無限定の「総合職」と転勤がなく地域限定で働く「エリア総合職(以下、「エリア職」)」に分けるという策はどうでしょうか。
「エリア職の導入が最も現実的な解決策で、導入に向けて検討中です」(エンジニアリング・建設など)という意見があった一方、以下のような限界や課題が指摘されました。
① エリア職に人気が集中し、総合職のなり手が不足する
「よほど大幅な年収の格差を付けない限り、大半の社員がエリア職を志望し、総合職のなり手が不足するでしょう。やっている仕事が今と変わらないのに総合職の給料を大幅に引き上げるというのも難しいです」(小売り)
② 総合職とエリア職の公平性の維持が難しい
「工場や研究所の管理職の一部は、転勤していません。仮にエリア職を導入して報酬の格差を付けると、エリア職から『転勤しない総合職が自分より給料が高いのはなぜ?』という不満が出てくると予想されます」(素材)
③ エリア職はそもそも不要
「エリア職の存在がそもそも不要です。特定の部署でオペレーションを担うだけなら、一般職で十分。その一般職も、将来的にはAIに代替されるでしょう。極論かもしれませんが、未来の組織は総合職とAIだけで構成されるようになると思います」(サービス)
すでに1980年代後半からエリア職を導入している保険会社でも、このところ総合職の転勤廃止やエリア職の廃止に踏み切るケースが出ています。エリア職は、この問題を解決する決定打にはならないようです。
「リーダーに転勤の経験」は必須
ところで、多くの企業が転勤廃止に消極的なのは、事業運営のために全国転勤の総合職が必要という点もさることながら、リーダー育成の方法として転勤を重視しているからであるようです。
「当社では、リーダーの不足が大きな課題です。リーダー育成のために研修などいろいろ取り組んでいますが、ローテーション(=転勤)が最も有効だと考えます。さまざまな事業を経験すること、本社も現場も知って人的ネットワークを構築することが大切です」(エネルギー)
「当社は転勤を廃止するつもりは毛頭ありません。全世界で事業展開しているというのもありますが、それよりもいろいろな国で事業経験を積むことが事業を牽引するリーダーとして必須だからです」(商社)
批判が大きい一方、企業にとって役割・メリットが大きい転勤。「転勤を廃止しよう」と叫んでも、なかなか一筋縄ではいかないようです。


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