現代はセレクトショップなどでさまざまなブランドを購入し、組み合わせる人も多い。しかし、由紀さんによれば、「当時は一つのブランドに共感すると、ほかに浮気することなく、全身そのブランドでそろえる人が多かった」という。
由紀さん自身も、好きなブランドの服をそろえ、ハウスマヌカンに覚えてもらうよう頑張った。もはや現代でいう「推し活」である。
上得意客を対象としたプレセールに呼んでもらうために購入実績を積み、何とか顧客名簿に載ろうとしたり、ショッパー(ショップ袋)欲しさに靴下やハンカチを購入して大きな袋に入れてもらったこともあったと振り返る。
「高校時代には、お気に入りのブランドのショッパーは、体操服や水着などを入れる袋にしていました」。DCブランドのビニール製ショッパーをサブバッグとして、学生カバンと重ねて持つのが、当時の女子高生のステータスであり、流行のスタイルだったのである。
大学生になり、「フランドル」でアルバイトを始めてからは、新しい服がどんどん増えていった。「手持ちの服で全身コーディネートを何パターンも考えて、吊り下げるのが一種の遊びみたいで、ワクワクしました。でも、クリーニング代が大変でしたね」と振り返る。当時のブランドの服は、現代のように家庭で洗濯できるものが少なかったのだ。
「ブランドのショップに行くときには、全身キメていかないと恥ずかしいというのがありましたね」。由紀さんの言葉に、筆者も思わず共感する。おしゃれをするためにショップへ買い物に行くのに、店へ行く時点でおしゃれをしている必要があるとは本末転倒だが、そういうものだった。
当時のオシャレとは、ある意味では「戦い」だったのかもしれない。
メンズとレディスの違い
たまにヘルプで「メンズフランドル」の店頭に立つこともあった。「フランドル」は、トラッドなエンブレム付きのスタジャンが人気のブランドで、レディスもスタジャンなどのメンズライクなアイテムをゆったりと着こなすのが定番だった。
由紀さんも、「メンズフランドル」の真っ赤なシャツをダボッと着るのがお気に入りだった。
メンズとレディスとでは、接客に違いはあるのだろうか。由紀さんによれば、「男性のお客さんの中には商品へのこだわりが強く、女性に接客されることに抵抗がある人が少なくなかった」という。
由紀さんは、「あんまり信用されていない感じでした」と苦笑いした。「男性からは材質の説明を求められることがよくあって。女性のお客さんは、デザインのかわいさで購入を決める人が多いのですが、その点、男性の方がシビアでした」。
大学時代にハウスマヌカンを経験した由紀さんは、就職活動でもアパレルメーカーを何社か受けた。しかし、結局、由紀さんが選んだのは意外な業種だった。そして人生の岐路で、由紀さんは憧れのブランドの服を手に入れる。次回は、90年代後半の社会人時代から現代に至るまでの、ファッションに対する「意識の変化」を考える。


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