遠藤さんが選ぶのは、梅田や天王寺などの高層ビルが立ち並ぶ中心部や、大型商業施設の中ではない。寺田町、阿倍野、南田辺と、地域の人たちが暮らす街に店を構えてきた。「街の駄菓子屋のような存在になりたい」という店のあり方と、固定費を抑えて食材や人にお金をかける経営が、ここで重なっている。
「失敗は一度も考えたことがない」
2023年の開業から、大阪にすでに3店舗、さらに海外と、事業は順調に拡大している。だが、27歳でここまで手を広げて、不安にならないのだろうか。
「失敗することは一度も考えたことがないんです」
遠藤さんは明るく笑う。
「店を始める前は、『失敗したらどうしよう』ではなく『行列ができたらどこに並んでもらおうか』と考えていました」
それでも店の立ち上げや経営の中で、大変なことはあったはずだ。苦労したことはなかったかと尋ねると、遠藤さんは少し首を傾げた。
「特にないですね。あったかもしれませんが、覚えていないのかも。毎日がずっと忙しくて、あまり記憶がないんです」
あっけらかんと笑う遠藤さんに、「どうして、そこまで迷いなく挑戦できるのでしょうか」と尋ねたところで、撮影のため、取材はいったん中断した。
しばらくして取材を再開すると、遠藤さんは、先ほどの質問への答えを口にした。
「……震災を経験したからかもしれません」
それまでとは少し違う口調だった。遠藤さんは宮城県石巻市の出身だ。2011年3月11日、彼女はまだ12歳だった。
(後編へ続く)


※ログイン後、コメント入力が可能です。