免疫反応を弱めることでエネルギーを節約し、身体活動を鈍らせかねない体組織の炎症を回避できる。これは一時的であれば問題ないが、ストレスが長引くと免疫システムを弱めた状態が続く。捕食者から逃げるための進化だという説もあるが、転職や離婚協議のような現代のストレスには必ずしも有効とは言えない。
長期的なストレスがさまざまな形で健康状態の悪化につながるおそれがあることは、100を超える研究で報告されている*3。
長期ストレスで傷が治りが遅くなる
長期にわたってストレスにさらされている人々は、ウイルス感染による症状が重症化しやすく、傷の治りが遅くワクチン接種への反応も弱い*4。ストレスを抱えている人々は、たとえばヘルペスウイルスが再活性化しやすい傾向にある*5。
認知症の配偶者の介護でストレスを受けている人々では、インフルエンザワクチンへの反応が低下している*6。さらにHIVに感染した男性が5年半の間にAIDSを発症する確率は、平均以上のストレスを感じている、または社会的支援が少ない場合、2~3倍に増加した*7。
ストレスは動物にも影響する。ただちに行動を起こすための警報が、魚類から鳥類、哺乳類にいたるまで地球上のあらゆる生物にとって生存に不可欠であることは明らかだ*8。動物の免疫にも影響するという事実は、ストレスが免疫の健康に深い影響を与えるという一般論を裏づけている。
ある実験では、ラットに捕食者のにおいを嗅がせてストレスを与えると、真菌感染症への抵抗力が落ちた*9。別の実験では、前後には動けるが方向転換できないように動きを制限されたマウスにインフルエンザウイルスを注射すると、免疫反応に遅れが見られ、感染した肺に移動する免疫細胞の数も少なかった*10。
重要なことに、このようなストレスを受けたマウスにコルチゾールの作用を阻害する薬剤を投与すると、免疫システムは正常に反応した。またストレスホルモンを感知する受容体タンパク質に干渉する薬剤を投与すると、マウスの免疫に対するストレスの影響が解消された*11。


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