ストレスがかかると脳下垂体から「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」が分泌され、これを腎臓の上にある副腎という2つの小さな腺が感知して、また別のホルモンを分泌する――このなかには、行動を起こす準備を整える2つのホルモン、「コルチゾール」と「アドレナリン(別名エピネフリン)」も含まれる。
ここには細やかな調整とフィードバックループが働く。
コルチゾール値が高ければ、脳がそれを感知し、さらなる分泌を停止する。ストレスが一時的であれば、この負のフィードバックによって体は通常のリラックスした状態に戻る。
スカイダイビング中に起こる変化
具体的な例を挙げよう。
スカイダイビングのタンデム飛行は、初心者にとってリスクを伴うストレスの多い体験だ。はじめて体験する人はジャンプ直後に白血球数に変化が見られるが、1時間もすれば通常の基準値まで戻る*1。映画を観ているとき、緊張による影響が長く続かない理由も同じである。
しかしストレスが長引くと、副腎はコルチゾールやその他のホルモンを分泌しつづけることになりかねない。そうした状況では、絶えず時間に追われて走っているような感覚に陥ることがある。
コルチゾールもアドレナリンも心拍数と血圧を高める。また肝臓に働きかけて血糖値を上昇させ、細胞と組織が利用できるエネルギーを急増させる。このようにして、ホルモンは身体活動の変化に備える。
この備えは、ストレス時だけでなく、多くの状況で重要になる。たとえば、朝になるとコルチゾール値が上昇し、体に目覚める準備をさせる*2。とはいえ、ストレスによるコルチゾール値の変化のほうがはるかに劇的である。
ストレスホルモンは身体活動への備えの一環として、すぐには必要のない身体システムを停止させたり鎮めたりする。
性的衝動も抑制される――確かにエネルギーの浪費かもしれないし、緊急時に集中力を欠く原因にもなりかねない。免疫反応も鎮まる――こちらのほうが理にかなっているし、コルチゾールの影響のなかでもっとも盛んに研究されているのもこの作用だ。免疫細胞上の受容体タンパク質がコルチゾールを直接感知し、これが病原体に対する免疫システムの反応能力を弱める。


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