大学は農学部で、食品に関わる研究をしていた。その研究室がたまたま「香りの成分を分析する研究室」だったという。就職活動では教授の紹介もあり、香料の専門会社に就職。飲料や菓子など、食品の香料の研究開発に従事した。
「もともと鼻が利くわけではないので、最初は全然嗅ぎ分けられませんでしたね。香料の名前と香りをひとつずつ覚えて、ある程度覚えたら『リンゴの香り』を作ってみる、といった訓練を繰り返しました。英単語を覚えて、覚えた単語からフレーズを作って……みたいな感覚に近いです。一人前になるまで、5年ぐらいかかりました」
その会社に10年ほど勤めたあと、2012年に株式会社バスクリンに転職。食品から日用品にフィールドが変わり、「使える香料が増えて仕事の幅が広がった」という。
「柚子や桃、ラムネの香りなどは、食品の経験が生きた部分もありましたが、とにかく最初は『お湯に溶けるとこんなに香りが出ないものなのか』と苦戦しましたね。先輩方に教わりながら、少しずつコツを掴んでいって……」
入社から14年。現在、佐々木さんは課長職に就き、後進の育成にもあたっている。「入浴剤専門の調香師はここ以外にほぼいないのでは」と話す佐々木さんが感じる、入浴剤専門ならではのやりがいとは?
「入浴剤は基本的にファミリー世帯で使うもの。お父さん、お母さん、子どもたちも、同じ入浴剤のお風呂に入ります。それぞれ好みが異なるなかで、ひとつの入浴剤を選んでもらわないといけません。万人受けする香りに落とし込むところが、入浴剤の難しさでもあり、面白さだと感じています」
入浴剤の在り方が変われば、香りの在り方も変わる
入浴剤の在り方は、時代とともに変化してきた。特にコロナ禍の巣ごもり需要を経てからは、疲労回復やスキンケア、アロマといった付加価値を持つものや、「自分へのご褒美」である高単価なものなど、パーソナルユースの入浴剤も増えているという。


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