特に思い入れがあるのが、『きき湯 ファインヒート ほぐしオフ』だ。足腰の疲れに効くことをコンセプトにした商品で、ブランド担当者から「体に効いている感じを出してほしい」という依頼があった。
「どうしようかな……と考えた末に、湿布を連想する香り成分であるサリチル酸メチルを、フレッシュハーブの香りの中に忍ばせました。普通に嗅いでもサリチル酸メチルの要素は感じず、でもなんとなく雰囲気は感じられる……という香りに仕上げた仕事で、今でも満足していますね」
とはいえ、こうした「隠し味」もAIがどんどん学習していったら、差の「40点」も縮まっていくのではないだろうか。もし佐々木さんのノウハウを学習した「佐々木AI」ができたとしたら、それに勝つことはできますか?と、少し意地悪な質問をしてみる。
「そうですね……。勝ち負けはちょっとわからないですけど、独創性があるのが人間の良さだと思っています。たとえば香りを配合していくとき、うっかり入れすぎてしまうこともあるんですよ。でも、そこで『失敗』にせず、そのまま続けるんですね」
「Aを入れすぎたら、Bを減らしたり、Cを足したりして帳尻を合わせる。そうすると、『意外にいいかも』と思わぬ発見が生まれることがあります。このフレグランス室には2000から3000種類の香料があるので、まだまだ新しい組み合わせが生まれるのが面白いところです。産みの苦しみを感じることもありますが、まだ世にないものを作り出せる楽しさのほうが上回っていますね」
「もともと花粉症ですしね」
繊細な香りを嗅ぎ分けられる佐々木さん、さぞや天性の嗅覚の持ち主……かと思いきや、まったくそんなことはないそうだ。「もともと花粉症ですしね」と笑う。
「春先になると、1日でティッシュ1箱使い切ることもあるくらいですよ(笑)。当然そのときは鼻が利かないんですが、『これを混ぜたらこうなる』というのは覚えてるので、一応仕事はできますね。処方(レシピ)を見れば、どんな香りかだいたいイメージできますし」


※ログイン後、コメント入力が可能です。