足りない40点はどこに現れているのか。その鍵は、人間の嗅覚にある。
「柑橘類の果皮に含まれる、リモネンという香りの成分があります。オレンジの香りは、リモネンが約9割を占めているのですが、レモンの香りもリモネンが約7割なんですね。残りの割合が、オレンジやレモンを特徴付けているんですよ」
鼻の奥には「嗅覚受容体」という、においを感じるセンサーがある。ヒトの嗅覚受容体は約400種類あり、それぞれ違う成分を嗅ぎ分けられる。
何かを嗅いだとき、脳は「どのセンサーがどれぐらい反応したのか」という情報を得る。反応したセンサーの組み合わせと、経験や記憶を照らし合わせ、脳が最終的な「あの香りだ」と判断するのだ。この仕組みにより、ヒトは数千種類のにおいを嗅ぐことができる。
そのため、特定の成分が多いからといって、その成分が最終的な香りになるとは限らない。香りと記憶を紐付けるのは脳の仕事であり、少量の成分が香りを特徴付けることも往々にしてある。「ここは最終的に人間が嗅いでみないとわからない部分ですね」と佐々木さんは言う。
直接匂わないが雰囲気を感じられる、絶妙な「香り」
また、香りを特徴付けるには「隠し味」も重要だという。
「たとえば『バスクリン ゆずの香り』には、100種類ほどの香りの成分が入っています。その中には、バニラや樹木の香りなどもあるんですね。それだけを嗅ぐと、柚子とは到底思えない成分ですが、他の香りを引き立てる役割として機能しているんです」


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