「仕入れる動機はもっとシンプルで、『この服は見たことがないから研究したい。だから手に入れたい』というだけです。僕にとっては、研究や表現活動を続けられることが一番大事なことなんです」
研究への意欲があるからこそ、長谷川さんの活動には独自性があるのだろう。その結果として、今は研究したい服を入手して、好きな研究に没頭できるだけの経済基盤を整えられている。
しかし、古い服を入手する難易度は年々上がっていきそうに思うが、どうなのだろうか。
「19世紀後半や20世紀初頭のものはまだ手に入りやすく、日本で古着の着物を手に入れる難易度と同じくらいです。ただ、17世紀の服になると希少性が高く1000万円を超えることもあるので、まだ手が出せないですね。いつか手に入れたいと思っています」
まねされても「どうぞどうぞ」の理由
長谷川さんの活動を参考にして、近しいコンセプトの展示をする人もいる。いわば、自分の活動を模倣されることについて、長谷川さんはどのように思っているのだろうか。
「僕の展示を見に来て型紙を買ってくださった方で、別ジャンルの研究をしている方がいます。『半・分解展のコンセプトを少しまねてやってみたい』という話を事前に聞いていて、そのときも『どうぞどうぞ』とお答えしました。洋服の構造を研究する活動の裾野は、どんどん広がっていってほしいです」
また、長谷川さんが販売する型紙は、商業利用できる形で提供している。実際に、購入者が型紙を使って制作した服のクラウドファンディングを行い、100万円以上を集めた例もあるそうだ。ただし、長谷川さんの名前や「半・分解展」を冠した協業・監修の表示は、別途確認が必要になっている。
「僕が一番やりたいのは研究に専念することなので、ライセンス料などを取って、細かく管理するようなことはしたくないんです」
それに、まねをされて活動が広がれば広がるほど、「その源には、型紙を作った長谷川さんがいる」という話も広がるそうだ。
これまでも、アパレルブランドが変わった形の服を発表してSNSでバズった際、「これ、長谷川さんがやっていたやつだ」というコメントがついたことがあった。そこから、彼を知らなかった人が長谷川さんにたどり着く、ということも起きている。
長谷川さんは名刺をもっていない。その理由は「SNSで発信しているので、自分を必要としている人は見つけてくれる」からだという。
確かに、「衣服標本家」と検索してみると、すぐに長谷川さんにたどり着いた。


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