服を作ることへのこだわりを手放せたのは、「違う場所に越境してきたから」だと長谷川さんは言う。アパレルメーカーに就職しても職場にこだわらず、テーラーの私塾や、広告業界の勉強会に出席し、ブログでの発信を続けていた。
そして独立し、半・分解展も実施した。その新たな一歩を踏み出したことで、多くの人が長谷川さんの活動に価値を見いだしてくれたのだ。
「独立した2016年頃は、物をもたない『無在庫』や『ミニマリスト』のような考えがはやった時期でした。その感覚もわかりますが、僕は幼い頃から本物を知りたい気持ちが強く、手に入れたい服に執着して集めて、ハサミを入れ続けてきました」
「本物」を知ることを追求してきた長谷川さんの執念が、自身の活動を唯一無二の活動へと昇華させてきた。
仕入れ値は数百万円、最初は必ず「言い値」で買う
ところで、ビジネスの大元となる、18〜19世紀にヨーロッパで着られていた貴族や労働者の服は、どうやって集めているのだろう。実は、海外の専門ディーラーから買い付けているそうだ。
「僕が扱う服は一般的に流通しているものではなく、美術館に展示されているような希少なものもあります。ですからやりとりしているディーラーは、NYのメトロポリタン美術館や、イギリスのヴィクトリア&アルバート博物館などと取引している人たち。海外の美術館が展示していた服を買い取ることもあります」
服の価格は幅が広く、数万円から高価なものでは数百万円ほどすることもある。希少な服はお金を出せば購入できるわけでもなく、ディーラーとの信頼関係が物を言うそうだ。その信頼関係を築くために、意外にもInstagramが役立った。
「研究内容を発信し続けてきた投稿を見て、『君はどんな仕事をしているんだ』と連絡が来ることが多いです。そして、僕がやっていることを伝えていくうちに仲良くなっていきます。あと、ひとつポイントとして、最初の取引では必ず言い値で購入するように心がけていますね」
数百万円の高価な服を仕入れるのは思いきりが必要になりそうだ。長谷川さんは「高価な服でも、展示や型紙にすることでペイできる」という発想で仕入れているのだろうか。


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